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大衆音楽史

森 正人 2008. 『大衆音楽史――ジャズ,ロックから」ヒップホップまで』中央公論新社,276p.,820円.

私の2012年に『地理科学』に書いた論文で言及しながら,実は通読していなかった。私がこのblogで日本の地理学者について何か書くと,いちいちそれを本人に伝えてくれる人がいるらしく,この著者の別の本の読書日記を書いた際にも,そのおかげでわざわざ著者本人がコメントを入れてくれた。そういうのは面倒くさいので,あまり細かい点まで書かないことにしよう。まずは目次から。

第1章 ポピュラー・ミュージックの登場

第2章 黒人音楽――ジャズとブルース

第3章 ロックンロールと若者文化

第4章 パンク・ロックの抵抗

第5章 レゲエ

第6章 モータウンとヒップ・ホップ

本書には目次に入る前に少し長目の「はじめに」があって,なぜ地理学を専門とする著者が新書で音楽の本を書くに至ったのかという経緯が丁寧に書いてある。それによれば,そもそも大衆音楽というものを定義づけること自体が難しいという。その上で,本書は目次にも明確なように,対象を定め,それを章毎にまとめていて,論旨は明快そして読みやすい。

本書に対しては,各ジャンルの音楽ファンからAmazonのレビューなどでいろんな突っ込みがあったらしいが,私自身は音楽研究をやりながらも音楽にそれほど詳しくはないので,そういう突っ込みはできないし,著者もそれを望んでいないことも分かる。彼が主張したいのはそういう次元の話ではない。

例えば,ロックンロールだって,本書で出てくるミュージシャンの名前はごく限られている。ボブ・ディランの名前は出てくるけど,彼についてはほとんど論じられないし(まあ目次に「フォーク」がないから当たり前だが),それぞれのジャンルの日本での展開の話もない。

しかし,新書という限られた紙幅のなかで,と考えれば本書はそれなりにバランスよくまとめられていると思う。しかし,個人的にはあまり興味を持って読んだ本ではなかった。もちろん,それは読者の音楽の関わり方によるのだろうが,私の場合は第4章と第6章については楽しく読むことができた。その他はそれまで知らなかった事実を知ったことは多かったが,決して知的刺激を受けたわけではない。

逆にいうと,著者が楽しく書いたのは何章だったのか,ってところが気になる。音楽の専門家ではないと書きながらも,やはり好きなジャンルがあるはずだ。あとがきに家でギターを弾いていた父とあるが,どんなジャンルの音楽を奏でていたのか,その辺も関係するのだろう。

まあ,ともかく本書を読んで,ポール・ギルロイの『ブラック・アトランティック』は読まねばなと思った。

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