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うわさと誤報の社会心理

大学院に入った頃か、購入した本書をようやく読んだ。普通、買ってそれだけ読まないでいる書籍は引越しの機会に古書店に売ってしまうのだが、この本はその選別から逃れてきた。恐らく、本書は5つほどの住居を転々としてきたはずだ。今回の引越しで改めてそのしぶとさに敬服し、読むことにした。

地理学の歴史のなかで、1970年代の人文主義地理学というトピックがある。土地のあり方だけでなく、人間の行動にまで研究対象を広げつつあった1960年代の地理学であったが、ここにきて、人間の頭の中にまで広げようとする運動が1970年代に出てきたのだ。

しかし、それは突如出てきたわけではなく、地理学に隣接する分野の「災害知覚研究」というのがあり、私が所属していた大学で不定期に発行していた『理論地理学ノート』という雑誌にそんな研究論文がいくつか翻訳されていた。扱われる災害の多くが自然災害であり、自然の動態を人間がいかに察知して自らの非難行動に結びつけるのかというテーマは、地理学の古いテーマである「人間-環境関係」にも関わる重要なものだと思っていた。

当時、日本ではその種の研究の第一人者が本書の著者である廣井さんだった。その分野は社会心理学といって、心理学の一分野としてではなく、社会学の一分野として存在している。社会心理学のルーツのひとつは当時私が好んで読んでいた象徴的相互作用学派とも言われていたし、その後米国の文化地理学を牽引することになるジェームス・ダンカンも関心を持つ分野でもあった。シブタニの『流言と社会』もとても面白かった。そんなことで、NHKブックに入っている本書を購入した次第。まずは目次から。

はじめに

第一章 情報化時代のうわさ

第二章 災害流言の社会心理

第三章 災害流言のケース・スタディ

第四章 災害警報と非難行動

第五章 誤報の社会学

第六章 高度情報社会と防災

あとがき

本書のタイトルからはわからないが、目次をみれば災害に関わる部分が多いことがわかる。25年前の本だから、とてつもない時代錯誤に襲われる可能性もあったが、前半はそうでもなかった。近年でも大きな災害を経験している日本だが、この辺のことはそんなに劇的には変化していないように思う。

じゃあ研究の方はどうかというと、恐らく社会心理学自体は進展していると思うのだが、うわさ研究や災害研究がどうなったかというと私には分からない。ともかく、過去にどんな災害があって、人々がそれに対してどのように対処してきたのかという点で、学ぶことの多い本。

ただし、出版当時の情報化の将来予測についてはやはり楽観的すぎるといわざるをえない。この辺は逆に面白い。

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