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世界の尺度

ズムトール, P.著,鎌田博夫訳 2006. 『世界の尺度――中世における空間の表象』法政大学出版局,463+27p.5600円.

近いうちに『人文地理』に発表される論文を修正中に本書の存在を知った。論文に関係する図書をAmazonで検索中、たまたま見つけたのだ。今回の論文では、地誌学(chorography)の歴史を簡単に辿っていて、中世を対象にした文献をあまり集められていなかったので、本書の存在は非常に魅力的だった。

しかし、結構な分量と価格だったため、なるべく早く修正して原稿を送り返したかったので、本書を読むことは保留にしておいた。その後、Amazonの中古品でそれなりの安値で出ていたために購入し、少し時間はかかったが読み終えることができた。幸い、今回の論文において必読文献という内容ではなかったので論文には反映しなかったが、地理学にも重要な歴史書であることは確か。まずは目次から。

序論

1 知覚されること

2 「中世」

I部 居住地

3 場所と、場所でないところ

4 郷土

5 建造すること

6 都市

II部 騎行

7 開かれること

8 道

9 巡礼者と十字軍参加者

10 遍歴の騎士

III部 発見

11 宇宙

12 大いなる躍進

13 他の空間

14 見えない世界

IV部 形象化されたもの

15 旅を語る

16 地図の作製

17 絵図

18 作品の空間

エピローグ

19 調和と光

ちなみに著者の発音は難しいが、原著は1993年に出版されたフランス語。非常に魅力的な言葉が散在する目次だが、目次を読み直しても、本書の内容は明確に思い出せない。

読み始めはけっこう苦痛だった。日本の地理学者による歴史研究はかなり年号というものに敏感だが、私が読むようなヨーロッパの歴史書はその辺はあまり気にしないような気がする。特に中世となると、おそらく史料自体に明確な年号の特定できないものが多いのか、あるいは年号の前後による決定論的な思想を回避しようという意図があるのか。

まあ、ともかくいろんな話が次から次へと展開して、なかなか頭が整理できないまま進んでいくような感じ。地理学者イーフー・トゥアンの博学的地誌に近い記述。

II部に入る頃からだんだん読みやすくなってきた。そして、「訳者あとがき」の解説とは違った理解のようにも思えるが、本書は「中世」というものを近代との連続の中で捉えようとしている印象が私にはあった。コロンブスの大西洋横断以降の植民地支配や地図製作の近代化などにつながる話どころか、もう近代ともいえる事項の記述もけっこう多かった。

そして、なんといっても本書には「地理学」や「地理学者」という言葉がかなりの数で出てきた。出てくる地理学者の名前のほとんどは私の知らないもので、今後の勉強のヒントになります。

読了から少し時間が経ってしまったので、あまり詳しく内容を紹介できませんが、非常に刺激のある読書でした。

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