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表象と批評

加藤幹郎 2010. 『表象と批評――映画・アニメーション・漫画』岩波書店,238p.,2800円.

加藤幹郎の本は何冊目だろうか。全てを読んでいるわけではないが,せっかくなので,ここで振り返ってみよう。

『愛と偶然の修辞学』(勁草書房,1990年)

『鏡の迷路』(みすず書房,1993年)

『映画ジャンル論』(平凡社,1996年)

『映画とは何か』(みすず書房,2001年)

『『ブレードランナー』論序説』(筑摩書房,2004年)

『映画の論理』(みすず書房,2005年)

『ヒッチコック『裏窓』ミステリの映画学』(みすず書房,2005年)

『映画館と観客の文化史』(中央公論新社,2006年)

もちろん,その他にも多くの著作が出ています。最近では彼の仕事に刺激された映画学が日本でも盛り上がりをみせ,編著も多く出版されるようになっています。まあ,ともかく彼の文章に間違いはないので,残りの著作も楽しみに残しておきましょう。

さて,本書ですが,目次は以下。

序章 眩暈と落下――ヒッチコック『レベッカ』のテクスト分析

第一部 映画

第1章 歴史と物語――スペクタクル映画作家スピルバーグ

第2章 ジャンル,スタジオ,エクスプロイテイション――エドガー・G・アルマー論の余白に

第3章 ジャンルの歴史の終焉――西部の人,クリント・イーストウッド

第二部 アニメーション

第4章 風景の実在――新海誠アニメーション映画におけるクラウドスケイプ

第三部 漫画

第5章 法外なもの,不均衡なもの,否定的なもの――マニエリスト漫画作家,荒木飛呂彦

第6章 愛の時間――あるいは漫画はいかにして一般的討議を拒絶するのか

第7章 プロミネンス,瞳の爆発――楳図漫画の恐怖の受容と表象

本書を読むことを決意したのはそのタイトル。ちょっと頓挫してしまっていますが,表象に関する論文を書いていて,その文脈で本書を取り上げたかった次第。

冒頭の,私が読んだ加藤作品の一覧からも分かるように,加藤氏は映画研究の第一人者でありますが,1990年の『愛と偶然の修辞学』でも既に傑出した漫画論を展開していた著者ですから,本書の第三部も読み応えあります。

そして,何よりも風景・景観論文を昨年出したばかりの私にとって魅力的なのは第二部。新海誠のアニメーション作品を風景論として読み解くという第4章です。新海誠の作品は私も好きで,特に2010年に出た本書では取り上げられなかった最新作『言の葉の庭』です。やはり具体的な場所の風景が精密に描かれる彼の作品は地理学者としてはとても魅力的で,加藤氏はまさにそういう観点から論じているのはやられたという感じ。そして私の論文で本書を取り上げられなかったのは大きな落ち度です。

ということで,私が特筆することもない素晴らしい本でした。

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