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星の処女神ガリアのヘラクレス

フランシス・A・イエイツ著,西澤龍生・正木 晃訳 1983. 『星の処女神ガリアのヘラクレス』東海大学出版会,225p.,3000円.

本書は『星の処女神エリザベス女王』と姉妹本になっており,それについてもかつてこの読書日記で紹介した。それはタイトル通り,英国のエリザベス一世に関する研究書だったが,本書は同時代のフランスを対象にしたもの。

http://geopoliticalcritique.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-1c7b.html

姉妹本の読書日記でも,その難しさについては書きましたが,本書もかなり難しいです。難しいというのは,イエイツの歴史研究は当時の歴史学としてはちょっと変わった視点からによるものだが,通常の視点から明らかにされている歴史の内容をある程度熟知していることが前提に書かれていると思われるから。その辺の知識のない私にとっては,彼女が何を論じようとしているのか判然としなくなることがしばしば。とりあえず,目次は以下の通り。

フランスの君主制

 フランスの君主制理念

 シャルル九世並びに王妃のパリ入城(1571年)

 ジョワユズ公華燭の盛典(パリ,1581年)

 パリの修道行列(1583-4年)

結論 星の処女神とガリアのヘラクレス

付論

 Ⅰ ハトフィールド館所蔵の女王エリザベス一世寓意肖像画群

 Ⅱ ボワサールの衣装画帳と二つの肖像画

 Ⅲ アントワヌ・カロンの凱旋門図

本書は一貫した歴史物語によって貫かれているものではなく,姉妹編の同時代のフランスの宮廷で行われた史実に関して書かれた論考を集めたもの。イエイツの研究歴においては,私も持っている『ヴァロワ・タペスリーの謎』と持っていない『16世紀フランスのアカデミー』辺りがかなり直接的に関連するようです。『ヴァロワ・タペスリーの謎』はまさしくフランス宮殿の祝祭を描いたタペスリーの図像学的研究であり面白く読んだので,関連する箇所はそれなりに理解できた。でも,一方で『16世紀フランスのアカデミー』はやはり必読だなと痛感した。

もう一つ,イエイツの代表作『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』も大きく本書に関わっていて,この時代のフランスと英国の関係を論じているとのこと。こちらも数年前に翻訳されて,高額のためにまだ購入していないが,読んでおきたい。

なかなか理解がすすまないものの,本書における「パリの修道行列」に関しては,巻末に多くの図版が掲載されていて,それを見るだけでも充分に面白かった。パリを練り歩く修道行列は,そのさまざまに描かれる人物も興味深いし,当時のパリの都市風景を背景にしていたり,聖書のさまざまな場面を描いたり,また修道士たちがパリのなかで行う慈善行為の内容を示す背景があったりで非常に面白い。

もう少し歴史的知識を手に入れてから再読したい本。

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