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2015年3月

映画マナー向上CMはいらない

201537日(土)

まず,予告編が終わって本編が始まるまでに驚いたこと。なんと,ここ新宿シネマカリテでは,あの煩わしい鑑賞マナー向上の映像を流さなかった。しかも,例の盗撮防止キャンペーンの映像もなかったのだ。恐らく,映画ファンはあの煩わしさに悩まされていると思う。たまに映画を観る人ならあのくらいは我慢できると思うが,頻繁に,そしていろんな映画館で映画を観る人は,さまざまなバージョンででも訴えることはワンパターンなあのマナー向上映像はほんとうにうんざりだ。そういう映画ファンに限ってマナー違反をするはずもない。もし,シネマカリテがその辺を分かっていて,映像を流さない判断をしたのであれば賞賛したいし,またその必要性がないほどシネマカリテに集まる客のマナーが良いのであれば,それもまた称賛に値する。

新宿シネマカリテ 『ラブストーリーズ エリナの愛情

随分前に『コナーの涙』を観て,期待半分で観た,女性の視点からの恋愛物語。これが私の期待を越えていい作品だった。『コナーの涙』ではあまり魅力的に見えなかった,主役女優のジェシカ・チャスティンだが,この作品で徐々に感情移入していって,どんどん魅力的な女性になっていった。この役どころは彼女が最適だったと思うほど。

『コナーの涙』ではほとんど出演していなかった,エリナの妹役として出演していたジェス・ワイクスラーの方が私的には好みだったが,やはり役どころを見事に演じていて,例えば,この姉妹を逆転させたらダメだろうなと思ったり。

同じストーリーを男女別々の視点で描くというこの作品の試みですが,出演する俳優もそれなりに異なっているため,続編のようにも楽しむことができます。まあ,上映は終わっていますが,DVDなどでも楽しめると思うので,ネタバレはやめておきます。いい映画です。

2015年3月20日(金)

以前妻が前売り券を2枚購入したものの,なかなか観る機会がなく,どちらも上映回数が減り都合の良い時間で観られなくなってしまい,この週末で夫婦1本ずつ観ることにした。私は平日の夜の回。

府中TOHOシネマズ 『シェフ 三ツ星フードトラック始めました

このブログ記事を書くために調べるまで知らなくて驚いたこと。この作品は主演のジョン・ファブローによる脚本・監督作品でした。『アイアンマン』の監督なんですね。だから,チョイ役でロバート・ダウニー・Jrが出てたわけだ。しかも,このシーンは面白い。全く意味不明のシーンです。他にも出演者が魅力的。ダスティン・ホフマンやスカーレット・ヨハンソンの贅沢な使い方だけではなく,ジョン・レグイザモはレオナルド・ディカプリオ版の『ロミオとジュリエット』にも出演していたクセのある俳優。

マイアミで元妻の提案でフードトラックを始め,息子と行く約束をしていたニューオーリンズ,そして住んでいるロサンゼルスに帰ってくるという,ロードムービーでもある。本作ではツイッターが随所で重要な役割をしていますが,このネット社会の描き方はどうかなというところはありますが,そこそこ楽しめる作品。

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欧化と国粋

ケネス・B・パイル著,五十嵐暁郎訳 2013. 『欧化と国粋――明治新世代と日本のかたち』講談社,360p.,1100円.

たまたま,外出先に持参した本が読み終わってしまい,書店で見つけた本。こういう場合は場当たり的に妥協して本を購入することが多いが,今回は本書を見つけられたことに感謝をしたくらい。

本書は講談社学芸文庫に収められているが,元は1986年に社会思想社から刊行されている。なんと,原著は1969年出版。なぜ,私が本書を手にとり,購入したかというと,西川長夫『国境の越え方』(筑摩書房,1992年)の4章が「欧化と回帰」と題し,日本は明治以降の近代化の過程で,欧化という欧米文化を吸収する時期と,回帰という日本人の元来の性質を見つめ直す時期とが交互に行き来するという議論をしているからだ。章のタイトルは回帰だが,当時ナショナリティの訳語として用いられていた国粋も何度も登場する。そして,『欧化と回帰』に登場する国粋主義者の陸 羯南と三宅雪嶺の名も『国境の越え方』で知ったのだ。しかし,改めて『国境の越え方』をめくってみると,本書は引かれていない。まあ,ともかく目次をみてみましょう。

序章

第一章 新しい世代

第二章 明治青年と欧化主義

第三章 日本人のアイデンティティをめぐる諸問題

第四章 国民意識の苦悩

第五章 条約改正と民族自決

第六章 精神的保証を求めて

第七章 国民的使命の探求

第八章 戦争と自己発見

第九章 日本の歴史的苦境

本書は非常に素晴らしい日本史研究である。正直いって,西川氏の本では,陸や三宅という国粋主義を標榜し,『日本人』という雑誌や『日本』という新聞を発行していたという事実は分かったものの,その内実についてはちょっとよく分からなかった。

しかし本書では,陸と三宅と,『日本風景論』の著者として地理学では有名な志賀重昂の3人の日本主義者がなぜ登場したのかということを,その前の欧化主義者,徳富蘇峰を対比させることで,非常に明快に論じている。しかも,その議論は非常に丁寧で,厳密に史料に基づいており,訳文も併せて,とても原著が1960年代に出たものとは思えない。まさに,この時代に講談社学術文庫に収められるべく本である。

本書を読むと,アンダーソンが『想像の共同体』でインドネシアなど旧植民地でのナショナリズムのあり方を議論していたことを思い出す。日本は植民地にはならなかったが,急速な近代化のなかで欧米文化の吸収によって新しい近代国歌として生まれ変わったわけだが,その後なぜ天皇を中心とする内向きの力が働き,軍国主義のもと拡張戦争へと突入していったのか,いまいち理解できていなかったのだが,本書でその一面を垣間見たような気がする。そして,内村鑑三のような人物が,キリスト教に深く心酔しながらも,日本国に対する忠誠を持っていたのかということについてもヒントを得たような気がする。

本書には直接的に書かれていないが,日本人が国粋思想というものをこの時代に得たのは,やはり国粋という言葉自体がナショナリティの翻訳語だったように,自分自身の国民アイデンティティを求めるという発想自体を欧米から学んだのではないかと考えた。

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久し振り川崎

2015222日(日)

この日はわが家に息子の保育園の友だちが遊びにくるというので,私は一人で映画を観に行くことになりました。上映館が限られている作品で,久し振りに川崎に。

川崎チネチッタ 『KANO1931海の向こうの甲子園

前売り券を早々と入手していたものの,ようやく観ることができました。まあ,本作は永瀬正敏や坂井真紀,大沢たかおといった日本人俳優も多く出演してはいますが,最近台湾映画の大作は確実に日本で公開されるようになって嬉しい限り。

まあ,といっても本作も『セデック・バレ』なども日本が台湾を統治していた時代のことを描いているので,日本で公開しなくてどうするということではありますが。先に観ていた妻の言葉通り,言葉はほぼ日本語で,何の抵抗もなく観られます。

日本における『ALWAYS』的なものが流行った傾向と似ているのでしょうか。一昔前の風景を描く手段としてCGが使えるようになり,台湾映画でも多用されているようです。CGが使われているシーンはちょっと興ざめな感じではありますが,3時間に及ぶ作品はなかなかよく仕上がっています。何よりも制作側の熱意が伝わってくる作品ですね。そして,日本の俳優もそれに応えようとしていて,特に永瀬の演技は私が観たなかでは最高の作品といえるかもしれません。

川崎チネチッタ 『娚の一生

妻に2本立てにしてきていいといわれ,もう1本選んだのがこちら。公開2週目の作品です。基本的に榮倉奈々も豊川悦司も好きなんだけど,榮倉奈々の伸びている髪というのがちょっと本作を観るのを躊躇させていた。しかし,最近では結局『わたしのハワイの歩きかた』も観なかったし,なにやら公開直前に27歳の誕生日を迎えたとかで,何となく観る気になった。彼女ももう27歳か。

彼女を初めて観たのは『僕は妹に恋をする』で,当時は19歳ということですね。その時は,背ばかり高くて顔に華がないなあなんて思っていたけど,非常に魅力的な映画女優に育っていて,最近では新作を楽しみにしている俳優。『図書館戦争』続編も楽しみですね。

さて,本作ですが,漫画の原作があるということですが,いい意味でも悪い意味でも豊川悦司が出過ぎています。でも,長身の豊川さんだから,この2人の年の差関係はいいですね。現場の雰囲気もさぞ良いことでしょう。そんな雰囲気が伝わる映像で,安藤サクラと向井 理というのがちょっと余計なキャストかな。その他の人選はとてもいいです。久し振りに廣木隆一監督作品を観ましたが,やはりいいですね。ストーリーと映像の調和が素晴らしいです。

そして,一箇所とても驚きました。豊川演じる大学の哲学教授の研究室でのシーンがあるのですが,そこにいた女性がなんと美波ちゃんでした。スクリーンで久し振りにみる彼女は驚くほど美しく,この1分ほどのシーンが観られたことで,この映画を観て良かったとも思ったほどです。しかし,リアリティの点からいうと,あの役どころは恐らく教授の秘書的存在ですが,哲学の教員にあんな人はつきません。

そういえば,廣木監督といえば音楽のセンスもいいのです。音楽監督は知らない人で,ミュージシャンのクレジットもあまりありませんでしたが,インストゥルメンタル中心の劇中音楽も良かったです。

2015年3月1日(日)

2月は28日で3月と曜日編成が同じなため,1日の映画サービスデー,14日のTOHOシネマズデーがたっぷり楽しめる,今年は貴重な年です。ということで,この日も夫婦で交代で映画。

府中TOHOシネマズ 『くちびるに歌を

私が選んだのは公開日翌日のこちら。まあ,そんなに期待はしていませんでしたが,長崎五島列島の景色は見てみたかったし,新垣結衣もどちらかといえば好きな女優さん。音楽ものはとにかくなけるだろうし。まあ,結果的には期待通り,よく泣けました。特に,合唱団男子の1人を演じた下田翔太って子が可愛かった。周囲のキャストもいいですね。

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フランス農村史の基本性格

マルク・ブロック著,河野健二・飯沼二郎訳 1959. 『フランス農村史の基本性格』創文社,343p.,1,200円.

ブロックの本は以前も『封建社会』を紹介しましたが,本書は1931年に発表されたブロックの出世作。実は,日本語に翻訳されていることを知らず,古書店で見つけた時には驚き,しかも高価ではなかたので,即購入。

序 方法についてのいくつかの観察

第一章 土地占有の大きな段階

第二章 農業生活

第三章 14・15世紀の危機までの領主制

第四章 中世末からフランス革命までの領主制と土地所有の変質

第五章 社会集団

第六章 農業革命の発端

第七章 展望。過去と現在

当時のフランス地理学にも大きな影響をもたらしたという本書ですが,読み始めてなかなか地理学者としては読みにくい。巻末に地積図と思われる,農村の地図が示されていますが,その説明も詳細にはなく,物足りない。やはりフランスの基本的な歴史の流れを踏まえた上で深く理解ができる内容なのでしょうか。

しかし,読み進めるにつれて,だんだん本書の魅力が少しは分かってきます。土地所有に関する議論がかなり中心です。領主制から囲い込みに関しては,もう少し基礎知識が必要でしたね。そして農業,社会集団,さまざまな角度から農村に迫り,それが中世から近代へと変化していきます。産業革命に相当する農業革命ってのもあったんですね。

やはり本書の文体というか,書き方も魅力の一つでしょうか。21世紀の読者からするとちょっととっつきにくいところもありますが,逆に今見直されるものかもしれません。ともかく,歴史的名著をまた一冊読めて良かった。

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