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美術の物語

ゴンブリッチ, E. H.著,天野 衛ほか訳 2011. 『美術の物語 ポケット版』ファイドン,1046p.,2100円.

まさにタイトル通り,美術史家ゴンブリッチが一般向けに古代から現代までを図版に基づきながら解説した大著。書店で日本語版を見た時に身震いする思いでしたが,ようやく読むことができました。

とりあえず,その長大な物語の構成を目次に語ってもらいましょう。

序章 美術とその作り手たち

1 不思議な始まり 先史,未開の人びと,そしてアメリカ大陸の旧文明

2 永遠を求めて エジプト,メソポタミア,クレタ

3 大いなる目覚め ギリシャ 前7世紀−前5世紀

4 美の王国 ギリシャとその広がり 前4世紀−後1世紀

5 世界の征服者たち ローマ人,仏教徒,ユダヤ教徒,キリスト教徒 1世紀−4世紀

6 歴史の分かれ道 ローマとビサンティン 5世紀−13世紀

7 東方を見てみると イスラム,中国 2世紀−13世紀

8 るつぼの中の西欧美術 ヨーロッパ 6世紀−11世紀

9 戦う教会 12世紀

10 栄光の教会 13世紀

11 宮廷と都市 14世紀

12 現実をとらえた美術 15世紀後半

13 伝統と変革Ⅰ イタリア 15世紀後半

14 伝統と変革Ⅱ アルプス以北 15世紀

15 勝ちとられた調和 トスカーナとローマ 16世紀初頭

16 光と色彩 ヴェネチアと北イタリア 16世紀初頭

17 新しい知の波及 ドイツとネーデルランド 16世紀初頭

18 美術の危機 ヨーロッパ 16世紀後半

19 さまざまなビジョン ヨーロッパのカトリック世界 17世紀前半

20 自然の鏡 オランダ 17世紀

21 権力と栄光Ⅰ イタリア 17世紀後半−18世紀

22 権力と栄光Ⅱ フランス,ドイツ,オーストリア 17世紀後半−18世紀初頭

23 理性の時代 イギリスとフランス 18世紀  

24 伝統の解体 イギリス,アメリカ,フランス 19世紀

25 永久革命 イギリスとフランス 19世紀

26 新しい基準を求めて 19世紀末

27 実験的な美術 20世紀前半

28 終わりのない物語

 モダニズムの勝利

 モダニズムの退潮

 変わりつづける過去

本書の初版は1950年。それから最終的に1995年の16版を重ねる。ある意味でゴンブリッチのライフワークにもなった作品のようです。そして,この出版社。普通は原著の出版社に翻訳権を支払って,翻訳側の国の出版社が出版しますが,このファイドンという会社は芸術関係の多国籍企業。以前にもランドアート関係の翻訳を見たことがありますが,どうやらそういうことらしいです。なので,翻訳者の情報も巻末にちょこっと載っているだけです。

さて,もちろん多くの読者にとって本書の醍醐味は本編にありますが,私にとっての最大の魅力は「序章」にありました。私たちがどのように芸術作品に立ち向かうのか,研究者として,批評家として,そして一般の芸術愛好家として。もちろん,ゴンブリッチは研究者ですが,研究者としての立場を十二分に意識しながら,同時にその研究内容をどのように一般の芸術愛好家まで伝えるのか,そんな事柄について思索した内容が記されていて,またその実践が本編ということです。

単純に時代順に並んでいるように見えますが,古代の世界中に残された素朴なアート作品は後のヨーロッパにおける芸術の維新に関わってくるという展開で伏線になっています。そして,各章の冒頭では建築作品についても触れられているのも特徴。また,本書の原則が図版に示した作品に関してしか解説をしないというもの,また図版に示す作品の選別に関しても,著者が実物を確認したことがあるという事実を優先したということ。この辺りからも著者の美術に対する真摯な態度を学ぶことができます。

ともかく,純粋に知的および感性的刺激を得られる読書体験です。

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