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ナショナリズムをとことん考えてみたら

春香クリスティーン 2015. 『ナショナリズムをとことん考えてみたら』PHP研究所,197p.,780円.

普段私はこの手のタレント本は読みません。といっても,本書はいわゆるタレント本とは違って,PHP新書から出ているし,著者の写真が全くないし,話題が政治ネタだしって意味ではかなり異色なわけですが,読み終わってみるとタレント本には違いありません。

今,とある非常勤先の大学でアンダーソン『想像の共同体』を教科書で使っていることもあり,学生にはレポート課題としてナショナリズム関係の本を読んでもらおうと思っているのですが,やはりその大学の学生にはいきなり研究者が書いた本は,新書レベルでも難しかろうということで,探してみて見つかったのが本書。

そもそもわが家にはテレビがないので,この著者については顔と名前くらいは知っていたが,冒頭にある「ヒトラー発言」も知らなかった。

でも,こういう機会にこういう本を読んでみるのも面白い。

序章 「ヒトラー発言」のあとで考えたこと

第1章 「ネトウヨ」の人たちはどうして怒っている?

第2章 そもそも「ネトウヨ」は「右翼」なのか

第3章 日本は「右」も「左」も大混乱中

第4章 キーワードは「グローバル化」という言葉

第5章 ナショナリズム,移民,そして「イスラム国」

第6章 メディアも「右」「左」にこだわる時代じゃない

終章 だから私は「右往左往」することを恐れません

政治を売りにする若い女性タレントがいてもいいと思う。本書はですます調で書かれ,明白な資料に基づいて論を進めるわけではない。幾人かの人物にお話を聞いた上で自分の意見をまとめている。登場するのは,まず2ちゃんねるなどの発言をきっかけに評論家になったという三橋貴明という人物。続いて,哲学者と肩書きが書かれている津田塾大学の萱野稔人。次に右翼団体「一水会」代表の鈴木邦男。最後がジャーナリストの田原総一郎。という面々。

本書の一定の分量が彼ら(女性は一人もいない)の発言の引用で埋められている。この辺があまりいい印象ではない。難しいことは詳しい人に聞けば分かる的な発想が否めないし,彼らにしても,好奇心旺盛なキレイな若い女性が話を聞きにきて,「ああそうですか,お教えしましょう」的な感じが目に浮かぶ。

確かに本書には面白いことも書かれているし,スイス人の母と日本人の父を持つハーフとしての貴重な体験についても書かれている。しかし一方では,萱野氏の発言を流用した「パイ」という経済主義的な議論はひどいと思う。本書で著者は若い人たちが政治に興味を持ち,気軽に政治に関する議論をすることを望み,それに本書が一役買うことを期待しているようだが,なかなか難しいように思う。

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