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分類思考の世界

三中信宏 2009. 『分類思考の世界――なぜヒトは万物を「種」に分けるのか』講談社,328p.,800円.

さて,池田清彦『分類という思想』に続いて読んだのが,講談社現代新書のこの一冊。池田氏の本のなかで,この著者である三中氏は,学術雑誌に掲載された論文が批判されていました。生物分類学としても池田氏が批判していた「分岐分類学」の立場にある三中氏が,この一般向けの本でどんな議論を展開してくれるのか,楽しみです。なお,著者は同じ講談社現代新書で『系統樹思考の世界』という本を既に出していて,前著が縦糸,本書が横糸ということで,姉妹編になっているとのこと。まずは目次ですが,300ページの新書判で12章は多い気もします。

プロローグ 生まれしものは滅びゆく

第1章 「種」に交わればキリがない

第2章 「種」よ,人の望みの喜びよ

第3章 老狐幽霊非怪物,清風明月是真怪

第4章 真なるものは常に秘匿されている

第5章 いたるところにリヴァイアサンあり

第6章 プリンキピア・タクソノミカ

インテルメッツォ 実在是表象,表象是実在

第7章 一度目は喜劇,二度目は茶番

第8章 つながるつながるつながるなかで

第9章 ナボコフの”ブルース”

第10章 目覚めよ,すべての花よ

第11章 時空ワームの断片として

第12章 「種」よ,安らかに眠りたまえ

エピローグ 滅ぼしものはよみがえる

また,目次のタイトルも凝っていて,わかりにくいですね。本書でも分類というものが生物学に限らず,また学術研究に限らず人間の基本的な思考だと位置づけ,さまざまな例を持ち出して議論を進めます。特に著者はクラシック音楽にはかなり詳しいようで,なにやら音楽関係の共訳本もあるようです。その他にも,本文で言及されない図版が多く掲載されているのですが,アルチンボルドの絵画や石川雅之氏の漫画作品などにも言及が及びます。非常に博学であることがわかります。

生物学に関しても,日本ではあまり知られていない歴史上の人物や,日本のなかでも顧みられない学説などにも言及する辺りは読み物としては面白いです。しかし,章が次々と分割されて展開し,その都度,著者自身が学術会議の出席で訪れた国々の話など,全く余計な話も多い。

さて,そんな展開でありながらも,池田氏の本にはなかった重要な議論があります。それが「種問題」というもので,分類学のそれぞれの立場において「種」というものをどう捉えているのか,あるいはそれに関する形而上学な議論をせずに済ませてきたのかということについて随分ページを割いて論じています。しかし,明確な立場を持つ池田氏に対して,本書ではその辺もあいまいに終わってしまいます。まあ,分類同様,分類の前提となる種を決定することすら難しいことはわかりました。しかし一方では分類に関してはあまりまとまった議論がなく物足りない印象です。

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