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対照的な映画的世界

2015614日(日)

新宿武蔵野館 『グッド・ストライプス

菊池亜希子ちゃんは初主演映画『森崎書店の日々』以降,女優としてけっこう注目している女優さんです。先日観た『深夜食堂』にも出演していたことを書き忘れましたが,本作および続いて公開される『海のふた』はかなり期待していました。

なんとなく予告編ではしっかりものの亜希子ちゃん演じる女と,だらしない感じの中島 歩演じる男の物語かと思いきや,初めて見る中島 歩という男性俳優はかなりかっこよく,劇中でもいいところのおぼっちゃんという役どころでした。岨手由貴子という監督のオリジナル脚本ですが,カノジョはぴあフィルムフェスティバルの準グランプリを受賞しているんですね。グランプリ受賞者は1本劇場作品の制作が約束されるわけですが,やはり準グランプリからもセンスのいい監督が生まれているんですね。

まあ,そんな感じで私好みの素晴らしい作品。特に脚本が気に入りました。タイトルの「グッド・ストライプス」のストライプとは平行線の意味。外国の姉弟バンドで「ホワイト・ストライプス」ってのがいますが,なんとなく思い出しました。平行線というのはつかず離れずの男女関係という意味で使っているとは思いますが,本作ではそれが主人公同士の関係だけでなく,全ての人間関係において使われているところがみそ。

中島君演じる男の両親は母親をバービーボーイズの杏子が,離婚したちちおやを子供バンドのうじきつよしが演じている。うじきつよしは俳優としてのキャリアもあるはずだが,どうにもぎこちない演技。まあ,そういう演出なんでしょう。亜希子ちゃん演じる妊婦が水路に落ちて怪我をするシーンに,この2人が駆けつけるシーンがあるが,その共演シーンが個人的には面白い。劇中ではもちろん離婚して離れて住む2人が久し振りに再会して,という設定なのだが,私には1980年代のバンドブームで活躍していたバンドのミュージシャンが久し振りに会って昔話をしているように見えた。

他にも,亜希子ちゃんの職場仲間であり,バンド活動もしている臼田あさ美演じる女性との関係も微妙で面白い。また,このバンドのドラムスをイトケンさんがやっているのにはビックリ。今回の映画音楽は『リトル・フォレスト』に続いて宮内優里。やはりセンスいいですね。主題歌は大橋トリオ。こちらもなにかと評判がいいが,ちゃんと聴くのは初めて。でも,エンディング曲はあまりにもキリンジに似ていてちょっとイマイチ。

さて,ストーリーに話を戻しましょう。映画的世界では,2人の人間の関係は極端に仲がいいか,悪いかということが多い。親友と呼ばれる2人はお互いのことを完全に知っていて,全てを許容する。でも,実世界はそうではない。いくら仲が良くたって,四六時中一緒にいるわけでもなければ,全ての行動や感情を知っているわけではない。かといって,時に仲が悪くなっても関係は続いていく。この映画では,その辺のリアリティがかなり強調されて描かれているように思う。登場人物間の人間関係を険悪にしそうなエピソードを組み込みながらも,それをさらっと流すことで,当人同士の関係はそのまま継続していく。

ということで,「グッド・ストライプス」と複数形な訳だ。今後もオリジナル脚本で勝負するのか,この監督には注目していきたい。

2015年6月21日(日)

立川シネマシティ 『海街diary

是枝監督作品だが,カンヌ映画祭に四姉妹を演じる女優を連れて行ったことで随分話題になっている。同じように樹木希林を連れて行った河瀬直美監督作品『あん』と並んで,映画館はけっこう賑わっていて,ちょっと早めに行かないと満席になってしまう状況。是枝作品は毎作それなりには売り上げていると思うが,河瀬作品はそうでもないので,映画ファンとしては嬉しい限り。やはりこういう監督は撮り続けて欲しいので,そのためにもたまにはヒット作があるといい。

さて,その四姉妹が随分宣伝しているようなので,内容の説明はいりませんよね。まあ,長女を演じる綾瀬はるかと次女を演じる長澤まさみはいいとして,三女の夏帆と私は初めてきちんとみる広瀬すずの演技はちょっと楽しみにしていた。夏帆は『天然コケッコー』以来,主演作が続いていたが,その後はイマイチぱっとしない。本作では四姉妹のなかでもちょっとキャラが強い役どころと聞いていたが,これがなかなかいい感じです。俳優としては文句ありませんね。主演よりもこういう感じがいいのかも。さて,広瀬すずはすっかり出ずっぱりな感じのようですが,私的にはお姉さんの広瀬アリスちゃん好み。すずちゃんはそうでもない。あまり似ていませんよね。と思いきや,本作で葬式の後,三姉妹が鎌倉に戻ろうと電車に乗り,長女がすずちゃん演じる四女に「わたしたちと暮らさない」と声をかけた後,四女は少し躊躇し,「はい」という。そして,扉が閉まり,走り出す電車を追いかけるシーンがあるのだが,ここが姉アリスちゃんに似ているんですね。やはり姉妹だなと思った一コマ。

映画全体としては,さすが是枝監督という感じです。『グッド・ストライプス』と比較すると,その違いが明白です。是枝作品は以前も書いたことがありますが,箱庭的というか,まさに映画的世界ができあがっているんですよね。そこで示される現実性は映画的リアリティというか,現実にはありえないんだけど,特定の時間に収められた映画のなかでは完璧に説得力を持つというか,そんな感じ。

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コメント

菊池亜希子は「森﨑書店の日々」以来、好きな女優なので、「グッド・ストライプス」もせめてDVDで観られたら、と思っていました。
良かったんですね。
お、オフィシャルサイトの劇場情報をチェックすると、時期未定ながら岡山のミニシアターでも公開されることになっているではないですか♪ 楽しみ。
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「海街diary」は、フリーパスでの最後の鑑賞作品。
期待以上の傑作でした。今年のマイ・ベストワンの有力候補です。
アリスちゃんもいいのですが、私は、すずちゃん派です(笑)。
メイキング等の特典映像を観たいので、DVDを買うと思います。
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さて、そろそろ湯布院映画祭の季節。
柳英里紗ちゃんが、2年ぶりでまたゲストとして来てくれることになりました!
一気に気分が盛り上がっているところです(笑)。

投稿: 岡山のTOM | 2015年7月 3日 (金) 17時05分

TOMさん

『グッド・ストライプス』岡山公開決定,おめでとうございます。
『海街diary』は写真集も出ていますね。もう購入済みでしょうか。

柳英里紗ちゃん,懐かしいですね。
すっかり大人の女性になっていることでしょう。
最近の活動をチェックしてみます。湯布院ってことは映画に出ているんですよね。

投稿: ナルセ | 2015年7月 8日 (水) 05時43分

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