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新しい民族問題

梶田孝道 1993. 『新しい民族問題——EC統合とエスニシティ』中央公論社,290p,820円.

大学院に上がったころ、雑誌『世界』に掲載された梶田さんの文章を読んで、当時新刊で出ていた本書を購入した。雑誌記事の短さに比べて、新書とはいえ300ページほどある本書は、読み始めたものの、途中で投げ出してしまった記憶がある。

今年度からエスニシティに関する講義を担当し、真っ先に再読を思い立ったのが本書。読み始めたものの、秋学期の講義だったこともあり、またやめてしまった。なぜかすーっと頭に入ってこない、私にとっては読みにくい文章。しかし、講義も始まり、後半にはヨーロッパとEUの話もする予定なので、再度読むことにした。今回は民族問題や、近年話題の難民問題へと少し頭がシフトしていたせいか、何とか読み終えることができた。

序章 外国人たちのヨーロッパ

第一章 EC統合と「人の自由移動」

第二章 不透明な非EC諸国民の将来

第三章 「移植されたイスラム」のゆくえ

第四章 「東」から「西」への人の流れ

第五章 南欧をめぐる人の移動の変化

第六章 難民制限へと向かうEC諸国

第七章 ナショナリズムをめぐる問題

終章 EC統合と民族問題の変容

読み終えてみると、20年前の本であり、すでに「新しい」民族問題ではなくなってはいるが、とても有用な情報と見識が詰まった本であった。EC時代には目標でしかすぎなかったことが既にEUとして実現してはいるが、本書はあとがきに「199311日 EC単一市場発足の日に」と記されているように、ある意味で非常に重要な転換期に書かれた本でもある。

そして、拙い私の知識ではあるが、移住や難民の問題について、かなり広い見地から事例が集められている。目次からも分かるが、ヨーロッパ内移民の供給先の変化、イスラムの問題。東西対立から南北問題へ。

梶田さん自身はフランスの研究を中心としており、取り上げられる「スカーフ問題」などは古い気もするが、問題としてそうした問題はすでに過去のものかというとそうではない。タイトルの問題か、現在は増刷されていないようだが、今日でも価値を失っていない新書だと思う。ただ,副題に「エスニシティ」とある割には概念そのものに対する批判的検討はなく,本書における民族とは素朴な理解であるのは書かれた時代的な問題か。

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