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日本において都市社会学はどう形成されてきたか

松尾浩一郎 2015. 『日本において都市社会学はどう形成されてきたか――社会調査史で読み解く学問の誕生』ミネルヴァ書房,396p.,7000円.

私は一時期日本都市学会の地方支部である関東都市学会に所属していた。まあ,私も都市研究者のはしくれなので,積極的に入ってもおかしくないのだが,その時はたまたま知人に誘われていった研究会が,関東都市学会の若手研究会だったのだ。結局,その後数年にわたってその研究会に顔を出すようになって,学会にも入会した。当時は皆,大学院生の身だった。数年活動するうちに就職する人が多くなり,地方にいったり,研究会に出れなくなったりで,ある意味自然消滅的になり,私も足が遠のいてしまった。

そんななかで知り合ったのが,慶応義塾大学出身の松尾さん。1972年生まれのようですね。当時から,抜き刷りなどをいただいて,本書のような研究をしていることは知っていた。本人もいつも穏やかで,目新しいものに飛びつくというよりは,確実なものを堅実に調べ上げていくという社会学者だと理解していた。本書はそんな人柄もにじみ出るような労作です。

第1章 学問形成過程からの再発見――視角と方法

第2章 日本都市社会学以前の都市社会調査――異質性への視点とその限界

第3章 黎明期の日本都市社会学とその周辺――アカデミズムと社会調査の接点

第4章 社会的実験室としての東京――奥井復太郎の都市研究とその時代

第5章 都市社会調査の戦前と戦後――奥井復太郎と近江哲男の鎌倉調査

第6章 戦後の都市研究と総合調査――社会調査ブームと日本都市学会

第7章 調査プログラムとしての人間生態学――磯村英一・矢崎武夫・鈴木栄太郎による再解釈

第8章 日本都市社会学の形成過程と市民――被調査者へのまなざしの転回とともに

第9章 あり得たかもしれない都市社会学――須崎稔の爆心地復元調査

第10章 日本都市社会学の確立とその後――市民・社会調査・ポジティビズムの変容

本書のタイトル自体が長く,さらに副題もついていますが,読み終えてみるとそれ以外のタイトルが思いつかないような内容。読み終えて本書の内容を思い出す際にも,各章の長いタイトルプラス副題できちんと思い起こすことができます。ともかく,どの章も論じる対象と主題がはっきりしていて,ある意味私が各論文とは対照的だ。なので,あまりここで私が詳しく本書の内容を説明する必要はない。

目次で内容については分かると思う。しかし,もちろんその意義は読んでみないと分からない。あえて加えることがあるとしたら,最後の第10章の副題につけられた「ポジティビズム」について。この語は旧来,「実証主義」と訳されてしまうことによって,矮小化している気がする。私もなぜ,実証主義がポジティブという語によって表現されているのか疑問だったが,本書の解釈はそこに一筋の道筋を示してくれている。そして,実証主義の生みの親であるコントがまた社会学という語の生みの親でもあるというところが,社会学者である著者がこだわった所以であろう。

個人で購入するにも愛蔵書となるが,多くの図書館に購入して欲しい本である。

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