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国家への視座

ダンドレーヴ, A. P.ほか著,佐々木 毅ほか訳 1988. 『国家への視座』平凡社,239.,1600円.

本書は「ヒストリー・オヴ・アイディアズ」という叢書の28冊目。原著はゴンブリッチなどが編者に入った1冊の事典のようですが,日本語訳ではテーマ別にいくつかの項目を選んで小さな本として訳している。

はじめにこの叢書を知った時にはなんだか嬉しくて,古書店でもかなり高価な巻もあるが,買える程度の値段のものはよく買っていた。今手元にあるのは以下の4冊で,本書が5冊目。

12巻『神の観念史』

14巻『進歩とユートピア』

21巻『愛のメタモルフォーズ』

22巻『イコノゲネシス』

正直いうと,これまでの本はさほど面白くなかった。ということで,最近はこの叢書を古書店でみかけても,すぐには購入しなくなった。そんななか,なぜか購入した本書は期待以上に面白かった。まずは目次。本書に収録されている項目です。

国家――国家観の過去・現在・未来(ダンドレーヴ, A. P.著,佐々木 毅訳)

中世・ルネサンスにおける民族=国家の概念――国民国家誕生への道程(ポウスト, G.著,佐々木 毅訳)

政治体のアナロジー――王は頭,聖職者は魂,兵隊は手,農民は足…(ヘイル, G. D.著,佐々木 毅訳)

マキアヴェリズム――悪の教師か?自由の擁護者か?(ギルバート, F.著,佐々木 毅訳)

ナショナリズム――近代史における普遍的推進理念としてのナショナリズム(コーン, H.著,木村靖二訳)

アナーキズム――強制なき社会を求めて(レーニング, A.著,長尾龍一訳)

「国家」では歴史上の国家論が,「中世・ルネサンスにおける民族=国家の概念」では,近代国家成立前夜のヨーロッパにおける状況を概観することができる。

私は最近『君主論』を読んだが,マキアヴェリズムが何たるかはよく分かっていない。本書によれば,それは『君主論』の解釈をめぐって歴史的に形成されたものであり,『君主論』そのものとは遊離しているし,マキアヴェリの思想の全体性を代表するものでもないという。この辺りは納得したし,その『君主論』解釈自体に,現代読むわれわれには理解できない歴史的特殊性が潜んでいるのだ。

さて,私が最も得ることが多かったのが,本書でも一番分量の多い「ナショナリズム」。本書はアンダーソン『想像の共同体』(1983)以前に書かれたものなので,ヨーロッパ中心のナショナリズム論だが,私の素朴な疑問への回答が含まれている。素朴な疑問とは,かつてはインターナショナルという組織名で行われていた社会主義思想が,なぜ1国の権力を掌握し,独裁的になっていくのか,ということである。まあ,簡潔にいうとナショナリズムとの結びつきである。

さて,私は実はアナーキズムにも興味を持っている。かつて,地理学者がロシアではクロポトキンが,フランスではルクリュがアナーキストであったという事実もあるが,なぜか「無政府主義」という響きに惹かれている。とはいいながら,アナーキズムに関して本格的に勉強する機会はまだなく,全く理解はできていない。そういう意味でも本書は勉強になった。しかし,訳者の解説では,本書の記述への疑義が呈されていて,分かった気になった気分が削がれたが,まあともかくアナーキズムは私の期待する思想の中心であることは確認した。すこしずつ関連書籍を読んでいくことにしよう。

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