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ナショナリズム入門

植村和秀 2014. 『ナショナリズム入門』講談社,283p.907円.

非常勤で「エスニシティ・地域・境界」というテーマを持った社会学の講義を担当しているが、最後の事例でヨーロッパの話をする予定である。国民国家という政治システムは近代期にヨーロッパで誕生した、みたいないい加減な話をしているが、じゃあ、実際にヨーロッパ内部で国境の変動がどのようなものであったのかという知識を私はあまりもっていない。

それこそ、最近は授業の補足資料として高校の世界史の教科書を使っているが、そこにそれぞれの時代のヨーロッパの地図が載っている。しかし、地図を見せただけではなんの説明にもならないので、これから勉強していくつもり。そんなつもりで手を出した、講談社現代新書の1冊が本書。別の大学では前期にナショナリズムをテーマとした講義をしたが、本書はナショナリズムについてはあまり書かれていないようなきがする。

以下、目次で分かるように、事例を挙げて説明されているのは「ネイション」についてである。

はじめに——ナショナリズムを見た日

第一章 ネイションの作り方

第二章 ネイションの自明性──日本の形

第三章 ネイションの多義性──ドイツの変形

第四章 人間集団単位のネイション形成(一)──ドイツと東欧

第五章 人間集団単位のネイション形成(二)──ユーゴスラヴィアの滅亡

第六章 地域単位のネイション形成(一)──アメリカ大陸の状況

第七章 地域単位のネイション形成(二)──ヨーロッパの西と南

第八章 ネイション形成のせめぎ合い──重複と複雑化

第九章 ナショナリズムのせめぎ合い──東アジアの未来

第一〇章 政治的仕組みとネイション

本書では、nationを国民とは訳さず、もちろん民族とも訳さず、ネイションというカナ表記にしている。ナショナリズムを考える前提としてのネイションの理解である。そういう意味では、本書のタイトルは相応しいが、一般的な理解としての「入門」とはいえないかもしれない。ともかく、内容をパラパラめくって購入した私の必要とする知識には十二分に応えてくれる内容だった。

ナショナリズムや国家論に関しては、著者の専門分野である政治学(法学部所属)が最も中心だと思うが、私が読んできたのは社会学や歴史学が中心だったので、本書はちょっと読みにくい。加えて、新書ということで「ですます」調を使っていることも、私のような読者には読みにくい点。しかし、読みにくい分、第一章で示される著者の立場、認識をさらっと読み流すのではなく、何か違和感が残るまま読み進めることができる。

その違和感は第二章以降の事例の話で解消されていき、説得されていきます。「おわりに」にも書かれているように、著者の専門はドイツと日本、多少の東欧ということですから、本書の第六章以降は専門外ということになります。ただ、だからこそ翻訳のある文献からの説明を中心とした内容は、それ以上知りたい場合には参考文献にあたるという形で理解を深められるようになっていて、新書らしい内容だといえます。

内容に関しては目次にほとんど示されているので、詳しく説明しませんが、国民国家は国土という空間的に連続する範域を必要としますので、地域というのは必須です。しかし、一方では国民を形成する人間集団はなるべく均質であることが望まれますから、人間集団単位でまとめることが要求されます。このある意味では相容れないものを整合させようという試みがさまざまな問題を生んでいるということになります。

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