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自然と文化

バーバラ・ノヴァック著、黒沢眞里子訳 2000. 『自然と文化――アメリカの風景と絵画1825-1875』玉川大学出版部、350p.4800円.

私は2013年に『地理学評論』に風景芸術に関する論文を書いた。私のような大学に属していない研究者は、文献を無制限に利用できない。論文に関しては、最近ウェブ化が進んで助かっているが、著書に関してはそうはいかない。ある程度は非常勤先の大学図書館や市立図書館などでもまかなえるが、きちんと読んで論文に反映させるとなると、やはり自費で購入するしかない。本書は以前から存在を知っていながらも、中古でも安く出ていないため、上記論文に反映するのを断念した。

編集の過程で、査読者が本書の存在を指摘したのであれば、読まなくてはならないが、まあそこまでの査読者に当らずに済んだ。で、読み終えると2010年に『人文地理』書いた論文でも本書を引用すべきであったと大きく反省。

今回、Amazonのマーケットプレイスで比較的安価で出ていたものを購入。届くと表紙はなく、「創造学園大学図書館」のシールが貼ってある。どうやらこの大学は2013年に廃校になったらしく、蔵書が市場に出回ったということらしい。とりあえず目次。

第一部

 序章――ナショナリストの庭と聖書

 グランド・オペラと神の声

 音と沈黙――崇高の概念の変遷

第二部

 地質学的年表――岩石

 気象学的ビジョン――

 有機的な前景――植物

第三部

 原始のビジョン――探検

 人間の痕跡――斧、汽車、人物

第四部

 アルカディア再訪――イタリアのアメリカ人

 アメリカとヨーロッパ――その影響と類似性

上述した2013年の論文で、できうる限りの風景画研究(主に邦文)を探したが、アメリカに関するものは非常に少ない。そういう意味でも本書はカバーしておくべきだった。読んでみると、上記2010年の論文で大いに活用したコスグローヴの著作の中でも本書の影響は大きいものと感じられる。

訳者あとがきによると、本書はアメリカの芸術研究のなかで、パノフスキー流のイコノロジー分析を始めて適用したものということらしい。目次自体はちょっと分かりづらく,魅力的なものではないが,読み終えてみると章構成も非常に効果的で刺激的な読書体験でした。

風景研究としてはサイモン・シャーマ『風景と記憶』にも迫る重要な研究。そして,アメリカに限定しているところは地理学者にとっても必読書といえる。ただ,原著は分からないが,翻訳書は図版が巻末にかなりお粗末に印刷されているのが残念。本文では細部についても分析されているような風景画が1ページに6つも7つも縮小されて印刷されているのだから。

しかし,それは日本の出版事情から仕方がないものとしましょう。この訳者もなかなか面白い研究をしているようなので,チェックしてみることにしましょう。

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