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海賊の経済学

ピーター・T・リーソン著,山形浩生訳 2011. 『海賊の経済学――見えざるフックの秘密』NTT出版,318p.,2052円.

マクロな視点で世界史について学ぶなかで、海賊という存在が少し前から気になっていた。というのも、以前なら一般書の類で取り上げられていた話題が、真面目な学術本のテーマとして書店に並んでいるのを見ていたからだ。

今回、思い切ってそんななかから一冊を選んで読むことにした。決め手は訳者の存在だった。山形さんの訳書をきちんと読んだことはないが、最近でもトマ・ピケティの『21世紀の資本』を原著フランス語からではなく、話題性による緊急性から、山形さんが英訳から日本語訳していたりする。まあ、社会的には信頼のおける翻訳者だといえるからだ。

読み終わると、目次は非常に単純明快。ともかく、不可解だと思われている無法者の海賊たちの性質を、経済学という切り口ですっきり理解するというのが本書の目的。各章のタイトルにもその軽さが伝わるが、なんでも著者は需要供給曲線の刺青を17歳の時に右手に入れるという、ある意味イカレタ経済学者であるらしい。そんな軽い文章の翻訳を訳者も楽しんでいるようだ。

1章 見えざるフック

2章 黒ヒゲに清き一票を――海賊民主制の経済学

3章 アナーキー――海賊の掟の経済学

4章 髑髏と骨のぶっちがい――海賊旗の経済学

5章 船板を歩け――海賊拷問の経済学

6章 仲間になるか、それとも死ぬか?――海賊リクルートの経済学

7章 獲物が同じなら払いも同じ――海賊は平等主義者?

8章 海賊に教わるマネジメントの秘訣

エピローグ 経済学の普遍性

後記 海賊は永遠に不滅です――海賊の没落と再興

情報の出所 本書のみつけたお宝のありか

読後の感想は、ちょっと「?」。まあ、楽しい読書体験ではあったが、期待していたものはあまり得られなかった。私の疑問は訳者のあとがきにも丁寧に書かれているが、まずもって著者のいう経済学は近代経済学。社会は利潤最大化の合理的行動によってうまくいくということを信じていて(なんといっても、経済学は普遍性の追求だから!)、第1章の「見えざる」というのはアダム・スミスの「見えざる手」からきている。

海賊の活躍した年代は明確に示されているが、彼らの行動範囲については断片的な情報しかない。18世紀前半がそのピークというが、その世界史的位置づけ、重商主義や資本主義との関係性についてもあまり議論はされない。まあ、普遍的に通用する経済学による解釈だから、世界における場所の問題はあまり重要ではないのかもしれない。

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