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ナショナリズムの発展

カー, E. H.著,大窪愿二訳 1952. 『ナショナリズムの発展』みすず書房,111p.,350円.

大学講義で使っているウォーラーステイン『ポスト・アメリカ』を今年度はいろいろと補足しながら授業をしているが,そのなかで出てきた本書を読み返してみた。読んでいると,どうやら私自身が引いたと思われる傍線があり,初めて読むのではないと知る。しかし,中身はほとんど覚えていない。しかし,『ポスト・アメリカ』のなかでは,ナショナリズムと国際主義という文脈で出てきて,本書の内容はほぼ『ポスト・アメリカ』でも踏襲されていてビックリ。原著は1945年ですが,なかなか重要な本ですな。

1. ナショナリズムの極点

第一期

第二期

第三期

極点

第四期は果たしてありうるか

2. 国際主義の展望

個人と国民

国際秩序における力

追記

1.のタイトルからも分かるように,本書は邦訳タイトルから想像されるようなナショナリズム論というわけではない。原著タイトルも「nationalism and after」ということで,第二次世界大戦でナショナリズムがなくなるかもしれないという含意も含んでいる。内容的には近代の国際関係史といったところか。

第一期は,フランス革命(1789年)とナポレオン戦争(1803-1815)をもって終わり,ウィーン会議(1814-1815)をその終章とする,とされる。終章であるウィーン会議は,ヨーロッパの秩序再建と領土分割を目的としたもので,これ以降帝国や教会などの中世的結合が次第に分解し,国民国家と国教会とが打ち立てられたのに始まる。新しい国民単位で領土と宗教という原則の支配という世俗的軍事力が高まり,君主たる資格を持った個人間に結ばれた契約である国際法が誕生する。この時代の国民経済政策,主権者に体現される国家の力を強化する目的をもった重商主義の時代。

第二期は,フランス革命の所産であり,その基盤は1870年代以降崩れながら,1914年の破局まで続き,ヴェルサイユ講和(1919年)をもって終了するものだという。ナショナリズムとインターナショナリズムの諸勢力が微妙な均衡を保つ時代であり,ナショナリズムが新しい政治的,経済的環境のもとに活動し始めた。新しい社会層が生まれ,経済権力と政治権力が結合し,国家数が増加した。自由放任主義国家から社会奉仕国家へという流れのなかで,ナショナリズムの政治から経済への移行したという。ヨーロッパ国家は1871年の14から,1914年に20,1924年には26と推移し,世界に60以上の独立国家が成立する。

第三期は,1870年以降にその主要な特徴が形を成し,1914年から1939年のあいだに極点に達した時期だとされ,第一次世界対戦が起り,政府および軍隊に関する事件としての戦争観が放棄される。ここで,ナショナリズムが新しく不慣れな土地に移植された。ヨーロッパのナショナリズムはキリスト教,自然法,世俗的個人主義の伝統に基づくものであった。

第四期にすでに踏み入りつつあるかどうかを論断するのは早すぎる。これまでのナショナリズムの形とは異なり,世界政治の2人の新しい巨人である,米国とソ連は極めて多民族的性格を有する国家だからである。

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