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ユートピスティクス

イマニュエル・ウォーラーステイン著,松岡利道訳 1999. 『ユートピスティクス――21世紀の歴史的選択』藤原書店,162p.,1800円.

ギデンズの『揺れる大欧州』に続いて読んだが,ある意味ではどちらも世界的に有名な社会学者が今後の世界のあり方を問うというものだといえる。方や,リアル・ポリティクスに足を突っ込み,実名の政治家などを挙げながら短期から中期の具体的戦略を打ち出すのに対し,一方は年老いてもアカデミズムの立場から抽象的な議論で中期から長期の道筋を見通すという,かなり対照的なもの。

本書はニュージーランドでの1997年の講演を基にしたもので,ウォーラーステインの著書にしては薄い。

1 夢の挫折――失われた楽園?

2 困難な転移――この世の地獄か?

3 実質合理的世界――楽園の回復か?

1991年の『ポスト・アメリカ』もこれまでの自身の世界システム論の話題を総括しながら,その後の世界について言及するという内容だったが,『ポスト・アメリカ』は既出論文をまとめたもので,それなりの分量があった。でも,一方では文化や文明の概念の考察というウォーラーステインにとっての新しい展開もあった。

そういう意味で,本書はまとまった一つの文章になっていて,また1990年代以降の新しい話題もある。その上で,「ユートピスティクスというのは,ユートピアに対してわたしが考案した代用語であるが,それはユートピアとはかなり異なったことを意味する。ユートピスティクスは歴史的なオールタナティブについて真剣な評価を下すことであり,わたしたちに選択可能な史的システムが実質合理性をもつかどうかを判断する行為である」(p.10)と定義する本書の表題によって,わたしたちが選択すべき将来のみちすじに関して議論している。

著者は自分の立場を楽観的でも悲観的でもないとしながらも,やはり彼はマルクス主義者であり,平等な社会を夢見る楽観主義者である。楽観というより希望主義者というべきか。ともかく,いつも納得させられてしまうのだ。

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