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辺境から眺める

テッサ・モーリス=鈴木著,大川正彦訳 2000. 『辺境から眺める――アイヌが経験する近代』みすず書房,262p.,3000円.

昨年度の恵泉女学園大学での「地理学」の講義で近代日本における北海道をテーマにして話を組み立てた。その時読むべきはずだった本書だが,アイヌのことをほとんど理解していなかった私は,歴史的事実が整理された本を優先して読んで講義資料を作成した。

恵泉女学園大学は昨年度のみだったが,今年度明治学院大学で「社会学6:エスニシティ・地域・境界」という講義を担当し,部分的に昨年の講義資料を利用することにした。せっかくなので,本書を読んだわけだが,これがまた素晴らしい読書体験だった。

男性と女性の研究のやり方,また文章の書き方に根本的な違いがあるとは思っていない。まあ,とはいってもフェミニズムの女性が書く文章は科学普遍主義を信じて疑わない男性が書く文章とはもちろん違うが,本書の著者はフェミニズムを前面に押し出す研究者ではないし,文体という意味では私が読んでいるのは日本人男性が翻訳したものにすぎない。しかし,やはり読書体験としては自分が書けないということもあるが,独特な魅力に取り付かれるようなものであった。まずは目次から。

序 辺境から眺める

第一章 フロンティアを創造する――日本極北における国境,アイデンティティ,歴史

第二章 歴史のもうひとつの風景

第三章 民族誌学の目を通して

第四章 国民,近代,先住民族

第五章 他者性への道――20世紀日本におけるアイヌとアイデンティティ・ポリティクス

第六章 集合的記憶,集合的忘却――先住民族,シティズンシップ,国際共同体

第七章 サハリンを回想する

本書はタイトル通り,日本と蝦夷(北海道)との植民地的関係を,支配者側ではなく,被支配者側の立場から描こうとする。それと同時に,植民地主義というのは本来はヨーロッパのものだが,そこから見て辺境ともいえる東アジアの日本の事例から。まあ,そうはいっても辺境の人々は自らの歴史を記録しているわけではないので,本書でも日本側の間宮林蔵やロシア側の探検隊などの記録に頼るしかないのだが。まあ,ともかくそうした立場性に関する前半の議論も魅力的。

いわゆる蝦夷島(北海道)の事例は私もそれなりに他の本で読んでいたが,樺太(サハリン)の事例がなかなか興味深かった。特に講義テーマの「境界」と直接に関わっていたので,今回読んで勉強になりました。もう一つはこの後読むことになる同じ著者の『日本を再発明する』でも1章が割かれていますが,シチズンシップ(市民権)に関する議論がなかなか新鮮です。

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