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日本を再発明する

テッサ・モーリス=スズキ著,伊藤 茂訳 2014. 『日本を再発明する――時間,空間,ネーション』以文社,272p.,2800円.

『辺境から眺める』についで,モーリス=スズキさんの著作2冊目。長らく非常勤講師をやっている東京経済大学ではグローバル化を意識した内容で「人文地理学」をやってきている。講義内容は何度も変更してきたけど,そろそろ教科書を変更したいと思っていた。

最近,別の講義内容で日本の近代化を勉強するにつけて,グローバル化もいいけど,そのなかでも日本の変容もしっかり押さえておかないとと思い,学生自身も日本のことをあまり知らないのではないかと,本書を2016年度の教科書として使うつもりで購入した。まずは目次。

第1章 はじめに

第2章 日本

第3章 自然

第4章 文化

第5章 人種

第6章 ジェンダー

第7章 文明

第8章 グローバリゼーション

第9章 市民権

いやいや,やはり素晴らしい本だった。この内容をどう補足して教えるのかというのは難しいが,扱っている内容と本書を貫く主張は是非学生に伝えたい内容だ。目次を見てお分かりのように,一般的な歴史記述の形式にはなっていない。さまざまな切り口から近代日本を解剖するという感じだ。

第3章の「自然」に関しては,同じように近代日本の政治における自然の概念を扱ったトーマス『近代の再構築』(法政大学出版局,2008)とはあまり重ならない内容。

第4章と第7章は文化と文明を扱っており,西川長夫『国境の越え方』(筑摩書房,1992)よりもしっかりと日本の史実に基づいておりしっくりくる。第5章と第6章の人種とジェンダーは私がこれまで読んできた日本近代史では抜けてきた観点。西洋近代史では触れたことのある議論を日本の独自性の下で考えさせられる。

そして,『辺境から眺める』でも一つのテーマであった市民権=シチズンシップはモーリス=スズキさんの主たるテーマなのだろうか,最近私も真面目に考えなくてはと思っていた概念。

本書は副題にもあるように,時間と空間を強く意識し,もちろんグローバリゼーションに関する第8章も用意されている。そうした意味においても人文地理学の講義に利用できる著作だと思う。そして,読んでいて新鮮だったのは,著者が「伝統」という概念を積極的にそして肯定的に使っていこうという主張だ。この概念はホブスボウム・レンジャー『創られた伝統』(紀伊国屋書店,1992)以降,否定的に捉えられがちな概念だが,この概念を流動的なものとして積極的に活用していくべきだという。他の著者の著作も読んで講義内容を固めたいと思う。

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