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神を殺した男

丹治 愛 1994. 『神を殺した男――ダーウィン革命と世紀末』講談社,285p.,1500円.

この著者の名前は知っていた。1997年に『ドラキュラの世紀末』という本を出した時に知っていたのだ。当時,私はけっこう英文学の人たちの文献を読んでいた。高山 宏や富山太佳夫は有名どころだが,その系譜に谷地田浩正という人がいる。彼は1990年代前半に『現代思想』,『ユリイカ』,『imago』という青土社の雑誌に次々と論文を発表していた。特にブラム・ストーカーの『ドラキュラ』をめぐる議論は魅力的だった。そんななか,丹治さんの本が発表され,私は手にとって(結局購入していないが)参考文献をパラパラめくったが,谷地田さんの名もなければ,高山 宏門下(そんなものがあるかどうかは不明だが)の名前もあまりなく,幻滅した記憶がある。

本書はそれ以前に出された本だが,これも会社が終わって神保町で購入したもの。ここにはきちんと富山太佳夫『ダーウィンの世紀末』に言及がありました。著者は東大出身のようで,やはり研究自体はしっかりしています。現代思想寄り,出版社寄りの高山門下とは少し距離を置いているのかもしれません。

第一章 神の殺害――個別創造説・思弁的進化論・ダーウィニズム

第二章 人類の黄昏――ユートピアニズム・マルクス主義・ダーウィニズム

第三章 コリンズ殺人事件――自然主義・決定論・ダーウィニズム

第四章 大英帝国の栄光と暗黒大陸――帝国主義・人種差別主義・ダーウィニズム

エピローグ

目次からは分かりませんが,本書でとりあげる作品の分析で,私は2つのものがとても印象的でした。1つ目が第二章で取り上げられるH・G・ウェルズの『タイムマシン』(1895年)で,2つ目が第四章で取り上げられるジョウゼフ・コンラッドの『闇の奥』(1899年)です。『タイムマシン』は未読で,『闇の奥』はサイードの研究もあるので,原作も読んでいたが,原作自体がよく理解できなかった。しかし,本署の解説は,『タイムマシン』も『闇の奥』もダーウィニズムという切り口が非常に説得的だった。

ダーウィニズムそのものに関しても,ラマルクとかウォレスとかの生物学者との関係や,マルクスとの関係など丹念に論じられていて,学ぶことが多かった一冊。各章毎に図版の解説もいくつかあって面白い。

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