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美学イデオロギー

ポール・ド・マン著,上野成利訳 2005. 『美学イデオロギー』平凡社,398p.,4800円.

イデオロギーといえば,通常は言葉の問題だが,もちろん絵画芸術など言葉以外のもので達成されるというのは,ミッチェル『イコノロジー』(勁草書房,1992)で学んだが,イーグルトンの大著『美のイデオロギー』(紀伊国屋書店,1996)でかなり網羅的にその研究史を知ることになった。その後本書が出て,非常に興味を惹かれたが,その値段の高さに手を出せずにいたが,最近本書が平凡社ライブラリーに入ることになり,旧版が中古で比較的安く出回ることになり購入した次第。

編者序論――指示作用のアレゴリー(アンジェイ・ウォーミンスキー)

メタファーの認識論

パスカルの説得のアレゴリー

カントにおける現象性と物質性

ヘーゲルの『美学』における記号と象徴

ヘーゲルの崇高論

カントの唯物論

カントとシラー

アイロニーの概念

レイモンド・ゴイスに答える

本書は著者の遺稿集ということのようですね。生前に『美学,レトリック,イデオロギー』というタイトルの出版計画があったようだが,本書はそこに収められるはずだった既出論文を含め,ウォーミンスキーという人物の編集によって出版された。

ポール・ド・マンの文章は『理論への抵抗』しか読んでいませんが,最近主著の『読むことのアレゴリー』も岩波書店から翻訳が出ているようですね。

私も遅ればせながら2010年の論文で崇高論などを展開したが,やはり本書も読むべきだったと後悔。しかし,本書を読んだらそれこそカントまで遡らなければならなかったかもしれない。カントは短い『美と崇高との感情性に関する観察』を読んでいたが,本書によればカントの美学においてはこの本ではなく,第三批判と呼ばれる『判断力批判』を読むべきだという。

本書はそのカントの『判断力批判』とヘーゲルの『美学』の検討に多くのページが割かれている。本書を読みながら,そういった歴史的古典を読む重要さを痛感する読書。本書は1977年から1983年に書けて執筆された文章だということだが,最近地理学で話題の「物質性」という言葉もよく出てくるし,1990年代後半のバトラーの議論で話題の行為遂行性(パフォーマティヴィティ)も出てくるし,なかなか刺激的な読書でした。思想家の本は合う合わないがあると思いますが,ド・マンの文章は私に相性がいいかもしれません。他の本も読んでみよう。

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