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住宅問題

エンゲルス著,大内兵衛訳 1949. 『住宅問題』岩波書店,155p.,410円.

何気なく買っておいた岩波文庫の一冊。序文に書いてありますが,本書はドイツの『民族国家』という雑誌に掲載された3編の論文を1冊にまとめたもの。なお,民族国家という表現はnation-stateに対して,日本で以前用いていた翻訳表現でありますが,この雑誌のタイトルは「フォルクス・シュタート」ということで,ドイツ語の独自のフォルクスが用いられていて,国民国家とイコールであるかどうかは不明。

エンゲルスは自主的に住宅問題に関する文章をこの雑誌に寄稿したのではなく,匿名で掲載された住宅問題の解決法に関する論文に対する批判論文として1編目の論文が掲載される。2編目はその流れで,今度はブルジョア社会主義の立場による住宅問題解決法を論じた著作に対する批判論文。3編目は1編目の批判論文に応えて,匿名論文の著者が記名によるリプライ論文を掲載したため,それへの再批判をしたもの。

序(1887年第二版へ)

第一編 プルードンの住宅問題解決法

第二編 ブルジョア階級の住宅問題解決法

第三編 プルードン及び住宅問題についての補論

目次にあるように,その匿名論文はフランスの社会学者プルードンの考えに基づいているというのがエンゲルスの判断。プルードンに関しては,彼の著作『貧困の哲学』に対して,マルクスが『哲学の貧困』という著作で徹底的に批判したという背景もあるので,エンゲルスとしてはプルードン派の考えをそのままにしておくことはできないということ。

実は,この『哲学の貧困』は私も読んだことがあります。しかし,当時はほとんど内容を理解できなかった。それ以降私の理解度が上がったとは思えないので,おそらく本書におけるエンゲルスの書きっぷりが分かりやすいのだろう。また,プルードンの思想のなかでも住宅問題に関わるところだけだったというのもある。とはいえ,一部の経済学的な議論は理解できなかったが。

エンゲルスが第一論文で批判する匿名論文は,当時のヨーロッパの主要な大都市で持ち家率が低くなっていることを嘆き,それを資本主義の発達のせいにする。家主と借り主の関係は,資本家と労働者の関係と等しく,家主は借り主を搾取しているという論法だ。それに対し,エンゲルスは両者は同じ関係にはないという。家主と借り主の関係はあくまでも生産者と消費者の関係に近いのであって云々といった具合。

エンゲルス自体は本書はあくまでもミュールベルガー(はじめの論文では匿名だったが,エンゲルスへの反論で実名を明かす)論文に対する批判であり,本書はそれ以上のものではないと書くが,訳者の解説にあるように,本書のないようはマルクスとエンゲルスによる資本主義批判の内容がコンパクトに解説されていて,私のような読者にはとてもありがたい本だった。

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コメント

あ、本のタイトルだったのですね。
何か本当に住宅問題が起こったのかと心配しちゃいましたよ(笑)。

投稿: 岡山のTOM | 2016年3月13日 (日) 16時16分

TOMさん

すみません,心配かけました。
家の方は快適に暮らしています。

投稿: ナルセ | 2016年3月23日 (水) 05時26分

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