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日本の経済思想

テッサ・モーリス−鈴木著,藤井隆至訳 1991. 『日本の経済思想――江戸期から現代まで』岩波書店,337p.,3600円.

最近,2冊ほど読んでいるモーリス=鈴木さんの古い本を読んでみました。著書としては初めて日本語に翻訳されたものだと思います。Amazonの中古でかなり安く出回っていました。彼女は1950年生まれで本書の原著は1989年に出ていますので,39歳で本書を書いたと考えると(しかも本書は彼女の3冊目の著書),やはり若い頃からただものではなかったんですね。

ともかく,明治維新前から現代までを射程に入れたスケールの大きな試み。まずは目次から。

まえがき

序章 日本の経済思想と西洋の経済思想

第一章 徳川時代の経済思想

第二章 西洋経済思想の導入――明治維新から第一次大戦まで

第三章 両大戦間期の経済論争

第四章 戦後のマルクス経済学

第五章 経済理論と「経済の奇跡」

第六章 現代日本の経済思想

まあ,経済学は私のなかでも苦手分野ですから,なかなか理解が追いつかないところも多々ありました。しかし,その後の著者の研究からもうかがえるように,本書は日本の経済学を扱ってはいますが,経済学そのものの研究史ではなく,それを支える思想が主眼だと思います。

特に経済というのは(まあ,ある意味では自然科学ですらそうですが),学問が独立して発展するわけではなく,例えば日本であれば,開国以降,日本に資本主義経済が輸入されるのと並行して欧米の経済学が輸入される。資本主義経済は,開国前にある程度独自に発達した日本経済にある程度自然に導入される一方で,新しい近代国家としての明治政府が建国のために意識的に資本主義体制なるものを導入する。また,日本で経済学が定着すれば,その知識を国家が取り込んで経済政策へと適用していく。また他方では,国内で自然に発展していく経済動向に対して,あるいは国の経済政策に対して,ある経済学者たちは異議申し立てを行っていく,という具合に経済学は特定の思想を基礎として,社会と積極的に関わっていくというか,社会の一部として機能していく,そうしたことを考えさせる読書でした。

より具体的には,目次にもありますが,日本独自のマルクス経済学のあり方が思ったよりも強力だったこと,また以前から名前だけ聞いていた国家独占資本主義についても若干の知識を得られたこと,日本の経済成長期においては,日本だけでなく世界的視野の下で分析されていたことなど,学ぶことも多かった読書でした。

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