日本の風景・西欧の景観
オギュスタン・ベルク著,篠田勝英訳 1990. 『日本の風景・西欧の景観そして造形の時代』講談社,190p.,580円.
恐らく,修士課程に入学した頃に読んだ,講談社現代新書の1冊。ベルクはフランスの地理学者だが,日本通で日本では地理学以外の人が翻訳をしているし,日仏会館などで講演していたりする人物。通常,こうした翻訳文献というのは原語での出版物があり,翻訳される。日本語版には原著の書誌情報や訳者あとがきなどでの解説などがあるが,本書はそれが一切ない。日本語出版のために書き下ろして,翻訳したのだろうか。
序論
第一章 人類学的共通基盤
第二章 視線とその変化
第三章 発見と再発見
第四章 野生の空間から自然の風景へ
第五章 田園から田園風景へ
第六章 都市から都市風景へ
第七章 風景の彼方へ――造形の時代
大学院生時代に読んだ頃はひどく難しかった気がする。その一方では,風景=日本,アジア的なもの,風景=西欧的なものというかなり単純な二項対立の印象を与えるようなタイトルは本質主義的だ。日本は自然と共存し,西欧は自然を支配してきたという神話にもつながりかねない。春になって,早稲田大学でまた景観・風景に関する講義が始まったこともあって,改めて読み直してみた次第。
今回読んでみると,難解に思われる箇所はほとんどない。しかし一方では,本文の語り口は非常に慎重で(といってもある意味大胆だが),本質主義的な側面はあまりない。日本の自然観や風景観は明治期以降,西欧の影響を大きく受けているし,かといって一方的に西欧的なものに置き換わっただけではなく,逆に日本的なものが芸術分野を中心に「ジャポニズム」として西欧に新しい風景観をもたらしたことも指摘されている。
第四章,第五章の主題の語り方もけっこう社会構築主義的なものだったりする。多方面にめくばりしていて,さすがこの人は抜け目ない。私は2013年に景観・風景に関する論文を書いているが,本書を再読しなかったことは片手落ちだったかもしれない。まあ,そういいながらも字数の関係でベルクの他の著書に関する言及部分は最終的に全て削除したのだが。まさに本書も彼の他の著書に劣らず(分量は少ないが)博学的で,読者にものをいわせない雰囲気がある。とはいえ,あくまでも話を日本と西欧に絞っているため,通読すると両者を対立的に描いている感じは残ってしまう。
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