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人生地理学1

牧口常三郎 1971. 『人生地理学1』聖教新聞社,273p.,447円.

著者は創価教育学会(創価学会の前身)の創立者にして会長。そして,本書は明治36(1903)年に発行。日本で初めての地理学の学会は1879年創立の東京地学協会だが,まだ制度的な地理学は確立しておらず,この頃日本人によって書かれた地理学書といえば,明治27(1894)年に『地理学考』の書名で出版された内村鑑三の『地人論』や同じ年に出された志賀重昂の『日本風景論』(その前1889年に『地理学講義』あり)などがある。

一昨年度の講義で『地人論』を扱った際,本書も一緒に買ってちょっと読んでいたが,今回きちんと通読した。「人生」とは「人の生活」のことであり,人生地理学とは人文地理学とほぼ等しい。しかし,志賀や内村の書と同様に,その内容は現在の人文地理学とは異なり,自然地理学的な内容をかなり含んでいる。ということで,本書は5分冊のうちの1冊目だが,目次は以下の通り。

緒論

第一編 人類の生活処としての地

 第一章 日月および星

 第二章 地球

 第三章 島嶼

 第四章 半島および岬角

 第五章 地峡

 第六章 山岳および渓谷

 第七章 平原

19世紀ドイツの地理学者フンボルトの晩年の著作は『コスモス』と名付けられた。それを想起させるようなスケールの大きな目次。しかし,その内容は常に人間との関係が主眼にあり,太陽の光と熱がなければ動物としての人間の生命が維持されないということや,太陽暦にせよ,太陰暦にせよ,人間の生活の規則性を決めているのが天体の動きである。

まあ,そんな感じで,現代の私たちが理科や社会科の時間に習うような,地球の自転や公転,地軸の傾き,地形の成り立ちについて説明され,それらがいかに人間の生活に作用しているのかということを大胆に解釈していく。そう,『地人論』を読んでいても思ったが,かれらのいわんとする土地と人間の関係は,地図スケールで大地を見渡し,それをそのスケールに抽象化された生活様式の特徴とを関連づけるという,ある意味構造主義的な記号論に近い。

地理学という学問が日本にさほど根付いておらず,志賀や内田や牧口は狭い意味での地理学に囚われず,米国の地理学的なものを吸収しながら自由な発想で議論を展開しているといえる。ただし,本書については志賀からの引用が多いのは気になる。ともかく,思ったよりも読み応えのある本でした。機会があれば,2冊目以降も読んでみようと思う。

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