日本の景観
樋口忠彦 1993. 『日本の景観――ふるさとの原型』筑摩書房,291p.,960円.
本書は1981年に春秋社から出版されたものであり,私の手元にあるのはちくま学芸文庫になったもの。
風景・景観に関する論文は2013年に『地理学評論』に発表した内容で一段落つけたが,同テーマで講義は続けているので,本来読むべき基本文献は読んでおこうかと思う今日この頃。著者は1975年に『景観の構造――ランドスケープとしての日本の空間』(技報堂)を出しているが,そちらはまだ読んでいない。本書は裏表紙にも「景観工学の代表作」とあるが,読んでみるとあまり工学的な印象を受けない。
序章 風景の成長と代償風景の創造
第1章 日本の自然観と風景観
第2章 日本の景観
1 盆地の景観
2 谷の景観
3 山の辺の景観
4 平地の景観
5 日本の景観の原型
第3章 生きられる景観
1 美しい景観と生きられる景観
2 自然の景観と生きられる景観
3 都市の自然と生きられる景観
4 都市の景観と生きられる景観
5 最後に
まあ,本書の副題が1970年代の本質主義的な雰囲気を醸し出しているが,先日紹介した牧口常三郎の『人生地理学』との類似性を感じざるを得ない。1900年前後の地理学の書物はナショナリスティックな色彩が濃いが,第2章はそれに近いものがある。しかし,第3章では最近翻訳されたアプルトン『風景の経験』をかなり利用していたり,山水画やドイツの風景画家フリードリヒの話にまで及び,風景美の普遍性を追求しようとする。
タイトルには景観が用いられているが本文中では「風景」の使用も多い。その辺のこだわりはないのだろうか。全体的に各論の連続で総論的な議論も意外にない。結局,景観や風景とはなんなのだろうか。
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