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日本人をやめる方法

杉本良夫 1993. 『日本人をやめる方法』筑摩書房,253p.,640円.

本書の著者は,1939年生まれ。京都大学を卒業して毎日新聞の記者を3年間勤め,米国へ渡り,社会学で博士号を取得する。その後,オーストラリアで大学教員となり,日本人と結婚してオーストラリア在住という人物。

日本論・日本人論・日本文化論など,日本を論じる書物には,著者が日本人か外国人かという違いと,日本を絶賛するものと日本を否定するものとがある。本書は日本人が外部的な視野を手に入れた上で日本を批判する本。

まあ,社会学者だけあって,目次をみる限りでは,それなりに客観的に日本社会を分析し,本書自体が有り体の日本人論にならないように目配せしてある。しかし,正直読後の印象は他の日本論とほとんど変わりがない。

プロローグ 戦略としての相対化

第一部 日本社会の深層を縛るもの

 第一章 障害としての「班」の思想

 第二章 「籍」の思想との対峙

 第三章 「ものいえば唇寒し」からの自由

第二部 「脱日本」への道標

 第四章 「日本からの難民」という範疇

 第五章 越境主義への招待

 第六章 移民一世の楽しみ

第三部 日本人論からの解放

 第七章 日本礼賛論のからくり

 第八章 あべこべ日本人論

 第九章 「日本人勤勉論」を再考する

第四部 概念構築の根底

 第十章 「考える」ことを考える

 第十一章 英語習得の落し穴

第五部 個人の国際化への関門

 第十二章 テクノクラートの国際化

 第十三章 ビザ制度の背後にあるもの

 第十四章 レイシズムとの戦い

エピローグ 新世紀の冒険者たちへ

本書のなかで一番面白かったのが「記者クラブ」の話。ちょうど最近公開された日本映画『64』では,記者クラブが主要な舞台となっている。表現の自由を主張する新聞記者側と,自らに都合の悪いことは隠蔽しようとする警察側とを対立的に描いている。

しかし,新聞記者だった著者による告発によれば,各警察署内に設置された記者クラブは,その部屋の賃料を新聞社が払っているわけではなく,その光熱費も含め,各警察署もちだという。私もそもそもこの記者クラブという存在は疑問だった。自分の足で取材もせずに警察が発表することだけを情報源として記事を書くのはどうなのかと。まあ,実態はそんな単純ではないんだろうけど,映画『64』でもその辺の新聞記者の怠惰についてはまったく描かれていなかった。それはともかく,著者がいいたいのは,理想的には反政府的な勢力となるべくジャーナリズムが,ある意味日本に独自の「記者クラブ」という制度によって,最も国家に忠実な組織である警察の情報を横流しするだけというのはジャーナリズムが保守的な立場にならざるをえない,というのはごもっとも。

それ以外は典型的な批判的な日本論。まあ,日本人に本質的な性格があるという主張をするわけではありませんが,日本文化論というより日本組織論的な論調です。いわれればそうかもしれないなあとは思う主張だが,全てがそういいきれるかな,という疑問は常につきまとうし,やはり日本を一つの社会であるとか,組織であるとかという想定自体が間違っていると思う。

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