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夏も終わりか

2016年9月15日(木)

恵比寿ガーデンシネマ 『グッバイ,サマー

『エターナル・サンシャイン』で度肝を抜かれた監督で,その後,『恋愛睡眠のすすめ』(2006),『僕らのミライへの逆回転』(2008)と観たが,イマイチしっくりこなかった。そもそも彼はミュージック・ビデオをよく撮っていて,ビョークなどの作品も手がけていて,そんな作品集のDVDも出ている。以前親交のあったミュージシャンに借りて観たこともある。

彼の監督作品は英語圏での制作もあったりするが,本人はフランス人であり,本作はフランス映画。上に挙げた2本の映画が私にとってイマイチだったのは,その豊かな想像力についていけないというところが大きい。そういった意味では本作は違和感なく楽しめました。彼の想像力はおそらく子どものものなのでしょう。多くの人が大人になると失ってしまうものを彼は失わずに持ち続けていて,それが創造の源になっていると思う。

さて,本作はその想像力の担い手になっているのが14歳の男子中学生ってところが違和感のなさにつながっています。「あの頃はそんなこともあったよな」と共感できたり,「そういう奴もいたよな」てな具合で。ともかく,この主演のダニエル役の男の子が可愛いのだ。周りより背が低く,「ミクロ」とあだ名を付けられ,伸ばし気味にしている髪の毛でいつも女の子に間違えられる。本人はエッチなことも興味があるのに,同級生の女子とは同性扱いされてしまう。そこに,風変わりな転校生テオがやってくる。テオの家は骨董品屋でよく手伝わされて機械の修理などをやっている。知的でちょっと思想かぶれた主人公の母親をオドレイ・トゥトゥが演じているところがまたいい。

夏休みに2人は自分たちで廃材から作ったキャンピングカー(?)で旅行をするってのが大きなストーリーなんだけど,その車が出来上がる過程とか,作った車を行動で運転することの許可を得にいくところとか,道中の進路の決定とか,ともかく細部が凝っていて,上映中ずっと楽しめる作品。ただ,このありふれた邦題はいかがなものか。

東京等写真美術館 杉本博司「ロスト・ヒューマン」

この日は比較的時間に余裕があったので,リニューアルした東京都写真美術館に足を運んだ。この日やっていたのは杉本博司。杉本博司は英文の地理学論文を読んでいた時に知った芸術家で,数年前に日本でもドキュメンタリー映画が制作され,その存在は知っていたが,作品を生で観るのは初めて。館内のモニターで,園ドキュメンタリー映画を流していたが,ちょうど今回の展示に関わるシーンをやっていて,杉本は第二次世界大戦の戦争遺物の収集をしていた。その一部が今回の展示の一部となっている。

この展示は,世界の終わりを想定し,特に日本を対象にしているが,さまざまな職業の人間が世界の終わりを迎え,何を回顧し,何を反省するのか,人間が犯した罪とは何かという視点からの独白文が展示され(その文章の直筆には各界の著名人が協力している),それに関連する遺物が展示されている。それが3階の展示で,2階の展示は「廃墟劇場」というシリーズで,過去の「劇場」シリーズの続編とのこと。その名の通り,廃墟となった劇場のステージの部分に白く光るスクリーンを配し,撮影したというそれだけの写真ではありますが,そのかすかに写る朽ち果てていく劇場の様子が多くのことを物語ります。もう一つは「仏の海」というシリーズで,整然と並ぶ千手観音を撮影したもの。杉本氏は1948年生まれといいますから,来年で70歳。まだまだ精力的な活動が続き,刺激的な作品を魅せてくれるのでしょう。

2016年9月19日(日)

立川シネマシティ 『オーバー・フェンス

函館三部作と称し,佐藤泰志の函館を舞台とする小説の映画が異なる監督で制作され,どれもが好評を得ていた三作目。一作目は熊切和嘉監督による『海炭市叙景』が2010年,呉 美保監督による『そこのみにて光輝く』が2014年,そして本作は山下敦弘監督が手がける。山下監督については過去の映画日記でも書いてきたが,『どんてん生活』や『ばかのハコ船』という初期の作品を賞賛していた友人がいて,続く『リアリズムの宿』を初めて劇場で観た。この作品には若かりし頃の尾野真千子ちゃんが出演しています。その後も『くりいむレモン』『リンダリンダリンダ』『松ヶ根乱射事件』『マイ・バック・ページ』と観続けているが,正直好きな監督とは呼べない。ということもあって,その後の作品は観ていなかったが,本作は函館三部作の最後ということで観ることにした。

オダギリジョーと蒼井 優という組み合わせもいいですね。本作も他の2作となんとなく似た空気を醸し出しています。と,Wikipediaで調べてみると,彼の出身大学は大阪芸術大学で,熊切監督は先輩にあたり,呉監督は同期だという。まあ,淡々と撮る手法と映画音楽は山下監督らしい作品といえるのか。でも,正直なところは何が山下監督らしい映画なのかってのがイマイチはっきり分からないところが素直に好きになれない理由かもしれない。まあ,ともかく本作に関しては監督が誰ということは無関係に素直に観ることができる作品。原作でどう描かれているかは分からないが,蒼井 優演じる女性は彼女以外には難しいだろうし,優香がちょろっと出てくるところも面白い。「オーバー・フェンス」というタイトルの意味がもちろん象徴的な意味合いもあるんだろうけど,最後のシーンがそのものでほろっと笑えるラストがいい。

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コメント

「オーバー・フェンス」は、かなり期待している1本。
岡山では11月の公開なので、まだしばらく待たなければなりませんが、ベストテンの選出時期までには観られるので、ひと安心しています。
映画は、原作をかなり改変しているし、別の作品とミックスしたりしているそうです。

投稿: 岡山のTOM | 2016年9月26日 (月) 02時57分

TOMさん

あら,『グッバイ・サマー』はスルーされてしまいましたね。
いい映画ですよ。

函館三部作はやはり親しい監督三人でやっているので,事前に申し合わせているんですかね。

投稿: ナルセ | 2016年10月 5日 (水) 05時40分

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