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都道府県名と国名の起源

吉崎正松 1985. 『都道府県名と国名の起源』古今書院,169p.,2500円.

私が現在都道府県名の研究をしているということは何度か書いた。文献を読んでいるなか,発見したのが林 正巳『府県合併とその背景』(古今書院,1970)という本だが,タイトルを思い出せないままうる覚えでAmazon検索をした結果発見したのが本書。こちらも古今書院の発行でした。ちなみに,林 正巳は新潟大学で教えていた地理学者ってことが分かりますが,本書の著者についてはネット情報はなく不明。本書を読んだ限りではなんとなく,学校の先生かなにかで,生涯知名に関する研究書を読み続け,得た知見をまとめたという印象。

一,わが国の地名の研究

二,わが国の地方行政区画名の起源

三,各説

 1 都道府県名の起源(〔〕内は管轄庁所在地名)

 2 国名の起源

参考文献

あとがき

書名と目次通り,47都道府県および都道府県名と県庁所在地名が一致しない場合は県庁所在地名も含めて前半でその起源が説明されます。後半の「国名」とはもちろん「日本」という名前の起源ではなく,旧国(令制国,律令国)の起源。

昨年秋にこのネタで発表する前に,私は手っ取り早く都道府県名の起源を知るのに,『角川日本地名大辞典』の各巻で調べていた。本書は1985年の発行で,『角川日本地名大辞典』が全巻揃っていなかったからか,参考文献には含まれていないが,ともかく本書は新旧の資料から,都道府県名および国名に関する情報を整理したという労作。まさに私が今欲しかった情報が詰まっています。

といっても,私の観点からは,本書に記載された情報そのものというよりは,都道府県や旧国といったかなり広域につけられた地名の起源というのはかなりはっきりしないということが明らかに分かるということが重要です。本書によれば,地名は用いられている漢字の語義よりは読み方が重要であるという。日本の地名およびそれに準じて人名の名字も漢字2文字のものが多いというのは多くの者が知るところですが,地名の多くはそれまで呼ばれていた読み方に対して当て字として漢字を用い,さらにそれを2文字に変更したという経緯から,現在用いられている漢字は字そのものの意味は地名の本来の意味とはかけ離れているという。しかも,当て字として使う漢字が2つしかないとなれば,その途中で省略があったり,訛りがあったり,現在ではなくなってしまった読み方であったり,もちろん比喩表現を媒介したりということもある。ともかく,地名の起源というのは,起源というより歴史的経緯といった方が正しく,歴史の各時代でそれぞれの解釈があり,それが形を変えながら現代まで伝えられているというようなものである。

本書のなかで私的な観点から一つ不満があるとしたら,藩についての言及がほとんどないこと。そもそも府県はほとんどが廃藩置県によって成立して,府県名の多くが藩名を引き継いでいる。しかし,廃藩置県後に大規模な府県合併があり,最終的に旧国と近い領域が府県になったわけだから,旧国と都道府県との間の関係を「藩」という存在を媒介として関連づけられると思うのだが,本書はあくまでも地名の研究であり,その辺については考察外となっている。

ともかく,本書を読みながら,私の研究にとって重要なインスピレーションを多くいただいた。

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