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府県合併とその背景

林 正巳 1970. 『府県合併とその背景』古今書院,251p.,1500円.

都道府県名の研究を始めることになって,今更ながら日本史の基礎知識の欠如を補おうとしている。まあ,ともかく日本の地方自治制度にとって,廃藩置県から府県境界の画定までの歴史が重要なのは分かるんだけど,一筆書きの境界で連続的な地理空間を取り囲んで,なんらかの行政領域にしたというのがいつからなのか,そしてそれを支える空間観や思想がいつから生じたのか,ということはなかなかはっきりと分からない。

そんななか,地理学者の喜多祐子さんの最近の仕事は非常に興味深い。彼女は以前から絵図の研究をしているが,領域という主題がかつてからあって,最近は江戸から明治にかけての境界決定の経緯を,残された図的資料から明らかにしようとしている。そんななかで引用されていたのが本書。地理学専門出版社である古今書院から出ているのに,私は知らなかった。

早速Amazonで調べると,なんと11,000の値がついていた。ちょっと諦めていたが古書店が共同でネット通販をしているサイトがあって,そこでは4,000円になっていた。でも少し買い渋っていると,後日2,100円で扱っているお店を発見。しかも,現在の勤務地である神保町にある古書店ではありませんか。早速仕事帰りに購入。

第一部 現在の府県域成立の背景

 第1章 廃藩置県の展開

 第2章 都道府県域確定への過程

 第3章 都道府県成立に関連して

第二部 府県境界について

 第4章 府県境界の実態(その一)

 第5章 境界の標識(その二)

第三部 府県境界をめぐる紛争

 第6章 府県境界紛争の実態

第四部 不自然な府県境域の残存

 第7章 出入り境域

 第8章 対岸飛地

第五部 現行の府県域はこのままでよいのであろうか

 第9章 領域をめぐる府県改正論

書名からすると,廃藩置県によって日本全国300余りの府県が誕生したわけだが,半年余りでその数は70程度になる。すなわち,旧国を基準に府県の統廃合が行われたのだ。本書はその歴史的経緯をたどるものと想像された。しかし,最近また話題になっている「道州制」というのは戦後間もなく盛り上がりをみせたものの,本書が出る頃にはすでに下火になっていて,本書はそうした議論を改めて検討するために,府県境界の確定の歴史を辿ろうというものだということが分かった。

ということで,目次に示したように,第三部以降は既に明治の20年代以降長らくかわらずに続いている都道府県において,問題となっている紛争をとりあげ,それを見直す方策をたどっている。ある意味私にとっては,この後半部分は興味はない。かといって,前半における本書の意義が薄れるわけではない。

府県数の推移については大島美津子氏の歴史研究が明らかにしていますが,本書は第2章で全都道府県(沖縄は返還前)についてその都道府県域の確定経緯を概観しています。また,都道府県境界の特徴などについても詳しく,網羅的な情報が整理されており,便利です。ただ,私が歴史研究を読む限りではあまり評価の高くない宮武外骨『府藩県制史』に多くを依っているところは気になります。また,境界に関しては政治地理学者の岩田孝三氏による『境界政治地理学』という本があるということを知り早速購入。

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