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自然の死

キャロリン・マーチャント著、団まりな・垂水雄二・樋口祐子訳 1985. 『自然の死――』工作舎、683p.、3800円.

本書の存在は、トゥアン『個人空間の誕生』を読んだ時に発見して驚いたのか、ハラウェウィ『猿と女とサイボーグ』の一部を再読した時に発見したのか忘れたが、ともかく1980年に原著が出版され、それがいち早く1985年に翻訳されていたという事実に驚いた。

しかも、壮大なる大著でありながら、一気に読み終えてしまい、なぜ本著のような名著をこれまで私が知らなかったのかということもまた驚き。少なくとも、そう頻繁に引用される本ではない。自然の地理学に関心を持ち、場所論の関係からフェミニズムの著作もそこそこ読み、講義の関係で科学史についても勉強している私だが、これまで断片的に学んだいたことは本書にほぼ網羅されているといっても良い。個人的にはサイモン・シャーマ『風景と記憶』に匹敵する読書体験だった。

序(フリッチョフ・カプラ)

はじめに――女とエコロジー

第一章 女としての自然――はぐくむ地球

第二章 農地・沼地・森林――ヨーロッパの生態の変遷

第三章 有機的社会とユートピア――カンパネラ・アンドレーエ・カレンバック

第四章 生き物としての世界――ルネサンスの有機体哲学

第五章 無秩序としての自然――女と魔女

第六章 生産・生殖と女――受動的役割への転換

第七章 自然を支配する――科学技術と家父長制

第八章 機械論的な秩序――自然・社会・人間の新しい統一モデル

第九章 権力としての機械論――一七世紀の科学技術

第十章 自然の管理――人間優位の環境保護

第十一章 自然を論じた女たち――アン・コンウェイと哲学的フェミニストたち

第十二章 ライプニツとニュートン――生命論をめぐって

エピローグ

さて、先に結論めいたことを書いてしまったが、本書の内容に関しては、詳細な目次で大筋が理解できる。ただ、本書の魅力は、一般的に言われているmother natureやmother earthという言葉から連想される自然と女性との関係を、一枚岩的ではなく複雑なものとして、静態的なものではなく動態的なものとして捉えているところにある。こうした単純な観念はより深く論理的に思考すると、必ずそこに矛盾を孕んでいるものである(例えば、政治思想における左派と右派のように)。

まあ、ともかく短い言葉では説明しきれない内容だからこそ、600ページの文字を費やして記述しているわけで、私が少ない言葉で説明することこそが本書の魅力を損なうことになってしまう。ということで、科学を志すものであれば読むべき本。

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