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絵はがきの旅・歴史の旅

中川浩一 1990. 『絵はがきの旅・歴史の旅』原書房,208p.2300円.

 

中川浩一さんは私の敬愛する地理学者の一人。結局生前にお会いすることもなかったし,なんらかのコンタクトをとることもなかった。研究者には文章を読んで抱く人物像と実際に会った時の印象とが異なる人がいますが,中川さんはどうだったのか。

ともかく,私のなかでの中川さんは研究という営為を本当に楽しんでいるようで,その発想も自由で豊かである。以前,「先駆的な大衆文化地理学者,中川浩一」のような文章を書こうと思っていて,その頃入手できる彼の著作は手元に置いておこうと購入した一冊。

第一部
1
 ロマンチック街道点描
2
 「うたかたの記」の湖岸をめぐる
3
 「ローレライ」と「ハイデルベルク」をめぐる
4
 「四つの署名」捜索の跡づけ
5 『倫敦塔』実地検証
6 見落とされているモナコ
7 ソ連のシルクロードをたどる
第二部
1 エアラインとエアポート
2 バスのあれこれ
3 ホテルあれこれ
4 駅と駅前旅館
5 海水浴の歴史をたどる
6 青函連絡船回想
* 絵はがきことはじめ
あとがき

中川さんは,地理学者のなかでは珍しく一般読者を対象とした出版界でも活躍した一人。本書は地理学専門書も多く出している出版社からのものだが,一般読者を対象としたもの。書名からすると,素材は絵はがきを中心としたもののように思われるが,学術書のように対象やテーマを限定して文章が展開されるわけではない。非常にゆるい感じの旅にまつわるエッセイだ。とはいながら,古典的な文学作品も取り上げられ,時には地理学者らしい地図を使った綿密な歴史考証もあったりする。

第二部はまたまたマニアックで面白い。特に航空関係の仕事をしている私には「エアラインとエアポート」という文章が楽しめた。また,日本人の海外渡航が限定されている時期の体験記は貴重である。そういえば,私が写真研究で対象としている田沼武能氏もその時期から海外旅行をしている。

エッセイでありながら,アカデミックな研究としても重要な記述が散りばめられている本である。改めて,中川浩一氏の研究史をたどってみたいと思わせる読書だった。

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