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地名語源辞典

山中襄太 1968. 『地名語源辞典』校倉書房,458p..

最近私は地名の研究をしていると公言しているが,なかなか成果は出ていない。ただ,読書だけは進めていて,ふと見つけたのが本書。Amazonでさほど高価でなくあったので,早速購入。辞典というのは必要な項目を引くものだが,巻頭から通読した。私の蔵書にある辞典はそんなものばかりだ。ウィリアムズの『キイワード辞典』,クワインの『哲学事典』など。

まあ,辞典なので目次を載せてもしょうがないが,本書の場合には多少は意味があります。日本の地名のうちアイヌ語起源が少なくないというのは,金田一京介によって広められたというのはきちんと知りませんでしたが,本書はその影響下で,日本の地名を北海道だけ別だししています。附録もあったりします。

 

序論

一般の部

北海道の部

附録・アイヌ語地名対訳表

あとがき

 

私も蝦夷から北海道への歴史については最近多少なりとも勉強しているので,アイヌ語起源の地名が東北地方に広く分布しているのは知ってましたが,この著者は言語の伝播ということに関して,地理学者や一般の人とは違った発想をしているのが面白い。私たちはとかく,特に近代以前の物事の伝播は同心円的に拡散すると想定してしまいます。日本各地で地名がつけられた時期に,アイヌとの関係があった地域を想定すれば,それは東北のごく限られた地域だと思いがちですが,本書ではそういう思い込みはありません。

また,吉崎正松『都道府県名と国名の起源』(1985,古今書院)も同じ立場をとっていましたが,地名の漢字の多くは当て字であり,使用されている漢字の持つ意味が語源と関わりあうのは一部に過ぎないという認識は吉崎氏と同じです。とはいえ,読み方の方は日本語の意味を有すると考えていて,地名に関わる意味の有無というところに,本書は敏感です。そして,日本語の意味がおもいつかないような地名に関しては,アイヌ語を含めた多言語からの影響を想定する,という立場をとっています。なかには,聖書の記述やユダヤ教,キリスト教の教義が日本の地名に使われているという極端な説をとる文献も紹介しています。著者はそれらを鵜呑みにしているわけではありませんが,一方で多くの人がそういう学説を非常識として一掃してしまう傾向を戒めています。そういう多くの人が思いもしない発想から新たな発見があるという立場に立っています。

この著者がどういう立場の言語学者かは分かりませんが,本書の文面を読む限り,大学の教員ではなく,主流の学派に属しているわけではないようです。元々地名のみに関心があるというよりはひらすら「語源」に興味をもって文献を読み,資料を集めているような研究者のようですね。そういう意味でも学ぶことの多い読書でした。

 

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