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自然の人間的歴史

モスコヴィッシ, S.著,大津真作訳 1988. 『自然の人間的歴史 上・下』法政大学出版局,751p.39003500円.

 

自然に関する文献研究は細々と続けています。調布に行くときによく立ち寄る古書店で,上下で1000円と破格の値段で出ていたので,迷わず購入。モスコヴィッシの著書は『自然と社会のエコロジー』など知ってはいたが,読むのは初めて。法政大学出版局で上下巻分かれているのに,通しページになっているのは初めて。さすがに読むのは時間がかかりましたが得るものが多い読書でした。

自然の問題
第一部 自然過程と自然状態の継起
 第一章 自然,人間の術
 第二章 労働の創造
 第三章 自然状態の継起(
I
 第四章 自然状態の継起(II
 第五章 自然分割
 第六章 資源の変換
第二部 自然カテゴリーと自然系学問分野の進化
その一 機械的自然と自然的カテゴリーの構造
 第一章 自然的カテゴリーの形成と自然的カテゴリーに属する学問の歴史の統一性
 第二章 技術の独創性
 第三章 技術の期限
 第四章 哲学革命
 第五章 機械の宇宙から宇宙の機械へ(
A 機械哲学者)
 第六章 機械の宇宙から宇宙の機械へ(
B 機械的自然)
その二 科学,発明の仕事,自然の進歩
 第七章 冷たい宇宙と熱い宇宙
 第八章 科学革命の前ぶれ
 第九章 結果の科学
 第十章 自然の人間的歴史のなかで諸科学がもたらした変革
第三部 社会と自然の人間的歴史
 第一章 手と頭脳――自然分割の社会的表現
 第二章 社会の統治と自然の征服
 第三章 事物の開発
まとめ

読み始めは,すっと頭に入ってこなくて,相性の合わない文体と感じましたが,最近地理学でも話題の「物質」に関する議論が続いたので,読み続けました。自然と物質の議論は,エンゲルスの『自然の弁証法』なども登場し,著者が基本的にはマルクス主義だと理解しながら読み進める。時折マルクスが登場するものの,どっぷりとマルクス主義一辺倒ではない感じがします。

第一部はマルクス主義的な観点から労働に関する議論が続きます。労働に関する議論は,後の「技術」に関する議論につながっていくことが理解できますが,私がこれまで読んだマルクス主義的な労働論とは少し観点が違くて読みにくい。少し我慢して読み続けると第二部で科学史的な内容に移行していきます。

科学史の本は結構読んでいる私ですが,本書の特徴は第一部との関連で,「技術」に関する記述が多いということです。もともとの始まりから科学と技術は切り離されていなかったという認識から,人間の知の歴史において技術の果たす役割が大きいということになるのでしょうか。科学史というと著名な哲学者,科学者がいてわかりやすいわけですが,技術史となると難しそうですが,本書を頼りに今後理解を深めていきたい分野です。

第三部は科学史を社会史の一部として理解するという近年ではよくあるとらえ方ですが,原著の出版は1968年であり,先駆的な試みなのかもしれません。独特の論の展開でなかなか刺激的でした。また機会があれば,同じ著者の『自然と社会のエコロジー』も読んでみたいと思います。

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