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新・地名の研究

千葉徳爾 1983. 『新・地名の研究』古今書店,266p.2200円.

文化地理学を標榜しておきながら,千葉徳爾を初めて読むというのはお恥ずかしい話。ちなみに,書名の「新」はやはり柳田国男『地名の研究』を意識したもので,千葉自身による2冊目の地名書というわけではない。本書も著者が19411982年まで書き溜めていた地名に関する文章を集めて編集されたもの。私は日本の地名研究が1970年代後半に盛り上がりを見せ,1980年代前半には一通りの成果が出そろって,それ以降の発展があまり見られないと考えているが,本書もそこに位置づけられそうだ。本書は出版社からのすすめにより作られたものだという。既出論文から成るが,かなり手は加えられたものらしい。

はしがき
第一章 地名とは何か―その研究法
第二章 海の地名と山の地名
第三章 社会的地名としての単位集落呼称
第四章 自然的地名と社会的地名―石見中部高原の地名と土地制度
第五章 カイトについて―三河地方の歴史的小地名
第六章 水田地名と生活
第七章 山岳地の小地名
第八章 壱岐島における触集落
第九章 二,三の地名研究の試み
第一〇章 古代地名の統計的考察

千葉徳爾は地理学者であり,民俗学者でもある。特に地図の専門家である山口恵一郎にとって,地名とはまず地形図に掲載される公的な地名であるが,千葉にとっては地図にも載らない,その土地の住民の通称を現地調査によって聞き取ることを地理学的な(そして民俗学的でもある)地名研究としている。よって,本書が対象とするのは,私の対象外である「小地名」であるのだが,それが故に学ぶことも多い。

まず,著者は自らが関わる対象を小地名に限定し,「土地の状態との関係がはっきりしない広域の地名についても,まったく論じていない」(p.4)としている。さらに,地名の種類を「地点名称,地域名称,広域名称と,その階層秩序に応じて,それぞれに,地名をつけて土地を区分している」(p.17)と分けている。広域地名に関しては,「標準化して付近地名を総括代表するような地域名に上昇していくような性格」(p.94)としており,柳田国男の地名観と類似している。武蔵野という広域地名に関しても,「武蔵の国に存在する広大な原野を指すに止まって,どこからどこまでといったはっきりした境域が定まっていたわけではない」(p.208)としている。広域地名の研究に関しては,「小地名の中から政治権力が行政的な公称地名を選定して,特定範囲の総称として利用させる傾向をもち,広域地名の発生的な考察を試みる場合には,より小範囲の原地名の位置とその原意味を明らかにする必要」(p.219)を認識している。

この政治権力の行為を歴史的資料からきちんと特定するのは難しいかもしれないが,地理学的課題として今日であれば十分に成立すると思う。

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