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ポスト2020の都市づくり

一般社団法人国際文化都市整備機構(FIACS)編 2017. 『ポスト2020の都市づくり』学芸出版社,285p.2400円.

 

2020年の東京オリンピック後に,そのために行った都市整備をどう活用すかという議論は新聞レベルでもありますが,本書はフロリダの翻訳者である井口典夫氏も書いているということで,読んでみた。読み終わって,帯を見てみると,「ソフトパワーによるイノベーティブなまちづくりへ」とある。確かに,私はオリンピックのために整備された競技場や関連するインフラをどう活用するのかというハードな問題ではなく,ソフトな問題を知りたかったわけだが,本書はあまりにもオリンピックとは関係なかった。しかし,反面教師的に本書から得たものはあった。

序文 「ポスト2020年」が意味するもの(水野誠一)
1章 創造都市の理念と実際(井口典夫)
2章 都市の創造力を高める「ポップ」&「テック」(中村伊知哉)
3章 来るべき計画者のために~アートプロジェクトの現場から(芹沢高志)
4章 アートは地域に取り込まれるのか,地域はアートに力をもらえるのか(玉置泰紀)
5章 街のブランディングとソフトインフラ(小林洋志)
6章 動き出すパブリックスペースと運営組織のデザイン(保井美樹)
7章 都市開発の変化とソーシャルハブの形成(松岡一久)

その井口さんとは,本書に書かれている略歴によると国土交通省で役人をしていた後,青山学院大学に移ったという。本書の1章では,渋谷・青山・原宿エリアのまちづくりに関わった事例が紹介されているが,ここを「筆者自身のふるさと」(p.33)と呼ぶ。「地元」ならまだしもこんな日本屈指のファッション地区を「ふるさと」と呼ぶところにまず違和感を抱く。確かに,こうした多くの資本が集中する地区であっても,各企業が好き勝手にやって統一された街並みができるはずはないが,この地区を訪れる者なら誰もが知るあれもこれも私が提案したみたいに書かれると自慢にしか聞こえない。実態は分からないが,潤沢な資金に人材が集まるようなこの地区の事例は,事例になりうるのであろうか。

本書はそんな「エリートまちづくり」としては一貫している。地方の名だたるアート・フェスティバルのディレクターやKADOKAWAの編集者,博報堂プロデューサーなどなど。2章は竹芝地区に計画されているデジタル・コンテンツの集積地「CiP」の話。3章は別府市のアート・フェスティバルやさいたま市の「さいたまトリエンナーレ」。4章は日本各地で成功した「地域アート」の主催者へのインタビュー。5章は博報堂が手掛けた東京スカイツリーのソフト面でも取り組み。6章は公共空間の話だが,事例は日本の大都市圏中心部。7章は「ソーシャルハブ」という概念を提示しているが,公的に開かれた場でのクリエイティブな交流の必要性といったところでしょうか。

本書は地域活性化をうたっているわけではなく,あくまでも「都市づくり」といっているので,看板に偽りありというわけではない。私が期待していたものとは違っていたということだけだ。しかし,フロリダの理論がこういう人たちによって日本で紹介されていることが,現在この理論が政府の政策にも応用されていることの所以かと妙な納得をしてしまった。そこにアカデミーも絡んでいるわけだが,これらがもたらす功罪についてもアカデミーがしっかりみていかなくてはならないのかもしれない。

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