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クリエイティブ都市経済論

リチャード・フロリダ著,小長谷一之訳 2010. 『クリエイティブ都市経済論――地域活性化の条件』日本評論社,250p.2800円.

 

都市論の勉強の一環で読んだ一冊。フロリダの著書は『クリエイティブ資本論』が有名だが,一冊読むのであれば,地理学者でもある小長谷さんが翻訳したものを読んでみたいと思った次第。本書は『クリエイティブ資本論』のベースとなったいくつかの学術論文を収録したものということらしい。

 第Ⅰ章 はじめに
 第Ⅱ章 都市とクリエイティブ・クラス
第Ⅰ部 才能
 第Ⅲ章 才能の時代の競争
 第Ⅳ章 才能の経済地理学
第Ⅱ部 寛容
 第Ⅴ章 ボヘミアンの経済地理学
 第Ⅵ章 技術と寛容(ゲーリー・ゲーツとの共著)
第Ⅲ部 場所
 第Ⅶ章 大学,才能,場所の質
 第Ⅷ章 9.11以降の場所づくり――クリエイティブ時代におけるロウアー・マンハッタンの復興
 第Ⅸ章 未解決問題

本書を読んで,やはり『クリエイティブ資本論』も読んでおこうと思ったが,おそらくそこでの発想は本書にすでに出そろっているようだ。フロリダが主張するクリエイティブ都市という議論はすでに日本政府の政策にも反映されるほどポピュラーなものになっている。まあ,この手のものが制作に利用される際には,その表面的な理解や形骸化が常なので,そこから頭ごなしに否定するのではなく,きちんと読んでおかなくては。

フロリダの主張はとても分かりやすい。それは大胆であるから注目されやすく,また統計データを利用して指標化・数値化して示しているから説得的で理解されているように感じた。そして,一方ではそのことが逆に専門家には反感を読んだり,批判を招いたりしている。やはりなんとなくサッセン『グローバル・シティ』と似ている感じがした。

本書でフロリダは,クリエイティブ・クラスを特権的な階級とみなしているわけではない。誰でもクリエイティブな才能を発揮できるはずだが,実際に発揮できるにはさまざまな条件があるのだという。そのキーワードが「寛容性」である。ある場所にクリエイティブな才能を発揮した人が集まるのは,そこが寛容な場所だからだという理論である。寛容性をはかる指標の一つが「ゲイ」である。同性愛者は,自身の居心地が悪い場所を避け,自分を受け入れてくれる土壌を求めて移動をする。それは芸術家にも当てはまり,それを本書では「ボヘミアン」と呼ぶ。これは今読んでいるスミス『ジェントリフィケーションと報復都市』のジェントリフィケーションの動向と一致する。スミスはもちろんこの動向には否定的なのだが,フロリダの理論では,それが都市を活性化させる要因だという。楽観的なフロリダに対し,悲観的なスミス,そこに中道のサッセンを位置づけられようか。

それにしても,数値化されたデータの提示が私のような読者には非常に煩わしい。同じ指標を何通りも組み合わせて同じ形式のグラフに示すという表現の仕方はあまりクリエイティブには思えない。まあ,ともかく本書で,フロリダ自身は自分の学説的な位置づけもしているし,自伝的な内容も含んでいて,学ぶことは多かった。そして,本書は訳者の解説が非常に丁寧であることも特徴の一つ。『クリエイティブ資本論』の訳者は,後日紹介する本の執筆者の一人だが,フロリダ理論を政策に適用してきたまさに張本人だが,訳者の比較というのも面白いかもしれない。

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