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新自由主義(ハーヴェイ)

デヴィッド・ハーヴェイ著,森田成也・木下ちがや・大屋定晴・中村好孝訳 2007. 『新自由主義――その歴史的展開と現在』作品社,395p.2600円.

 

最近私は近年の都市論について勉強している。先日紹介したサッセン『グローバル・シティ』もその一環だが,それより有名になってきたリチャード・フロリダなども読んでいる。その議論はクリエイティヴ都市論などとも呼ばれている。こうした動向は日本の社会学者がけっこうきちんと紹介しているのだが,その文脈で,英語圏地理学者による「都市の新自由主義化」という議論があるらしい。こちらは日本語ではまだきちんと読めるものはないのだが,もちろんそのベースとしてハーヴェイの新自由主義論があるということで,読むことにした。日本語訳は400ページ近い大著だが,原題は「新自由主義の簡単な歴史」ということになっている。まあ,実際日本語版の帯にも「21世紀世界を支配するに至った新自由主義の30年間の政治経済的過程とその構造的メカニズムを世界的権威が初めて明らかにする」とあるように,歴史といっても英国のサッチャーと米国のレーガン辺りからの話にすぎない。

第1章 自由とはこういうこと
第2章 同意の形成
第3章 新自由主義国家
第4章 地理的不均等発展
第5章 「中国的特色のある」新自由主義
第6章 審判を受ける新自由主義
第7章 自由の展望
付録 日本の新自由主義(渡辺 治)

最近,作品社から翻訳の続くハーヴェイものとしては,本書が読むのが初めてだが,これまで私が読んだハーヴェイものとはかなり異なった印象を受ける。確かに,ハーヴェイは博学でさまざまな知識が自由自在に駆使されて論が展開するのだが,本書は私が生きている時代の歴史ということもあるが,時事ネタのオンパレード的な感じで,学術的な重厚さや地理学的な雰囲気が前半ではほとんど感じられない。まあ,それは翻訳本の想定の雰囲気にもよるのだろうけど,やはり矢継ぎ早に出版されるハーヴェイの最近の著作はこういう感じなのかもしれない。

とはいえ,やはりその議論は適切で,思わず納得させられてしまう。本書は新自由主義を扱ってはいるが,特に政治の側面からアプローチしていて,論旨は明確である。しかし,彼の得意とするところの「地理的不平等発展」に関しては,第4章の目次から期待されるほど学ぶことは多くなかった。

私にとって学ぶことが多かったのは中国に関する説明である。素朴に,私はなぜ社会主義国の中国がこれほどの経済成長を遂げたのかということについて知識がなく,その点では基礎的な歴史的知識を得ることができた。そして,第4章以降は徐々に読み応えのある内容になってきて,読後の達成感はかなり得られた。新自由主義に関してもう一冊翻訳されている『ネオリベラリズムとは何か』も読んでおきたい。付録の日本に関する議論もためになった。

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