地に呪われたる者
フランツ・ファノン著、鈴木道彦・浦野衣子訳 1969. 『地に呪われたる者』みすず書房、216p.、800円.
サイード『オリエンタリズム』を読んだのは修士課程だったが、その衝撃的な読書の後に、本書を読む必要を痛感していた。その後古書でファノンの『黒い皮膚・白い仮面』を入手し、読み始めたが途中で断念してしまい、そのまま本書に手を伸ばすこともなくなってしまった。今受けている依頼原稿のなかで、ポストコロニアリズムについてファノンに言及してほしいという要望があり、今更ながら読んだ次第。
序
1 暴力
2 自然発生の偉大と弱点
3 民族意識の悲運
4 民族文化について
5 植民地戦争と精神障害
結論
もうすでに現代のポストコロニアリズムに触れてしまっている身としては、1961年に原著出版された本書をどうとらえていいのか、前半を読みながら混乱した。ちなみに、序文をサルトルが書いていて、それから読むことも混乱の一因かもしれない。
第二次世界大戦が終わって多くの植民地は解放された。しかし、執筆当時ファノンが身を置いていたアルジェリアが独立したのは1962年。まさに、ファノン自身がその独立運動に参加していたとのことだから、そういう時代背景をまず知識として得た上で読むべきだったかもしれない。総論としての植民地主義はそれなりに理解しているつもりでいる。今日的には、力のある者が暴力的に力がない者から略奪するという印象だが、当時は社会ダーウィニズムに基づいて、優れた人種・民族が劣った人種・民族に与え、導くという意識があった。同時代的に考えた場合に、植民地支配を当事者たちが悪の行為と意識していたわけではないことに気づく。
しかし、実際の植民地支配がどのようになされたのかということを私はあまり勉強してこなかった。部分的にはアンダーソン『想像の共同体』や土屋健治『カルティニの風景』、英国の株式会社による植民地開発事業に関しては勝山貴之『英国地図製作とシェイクスピア演劇』、日本統治下の台湾を描いた映画『セデック・バレ』などで知ることもあったが、いまだに知らないことの方が多い。そういう意味でも、本書から学ぶことはあった。コロンと原住民、西欧化した民族主義者、民族ブルジョアジー、植民地のルンペン・プロレタリアート、など支配する側と支配される側の両極のさまざまな位置にさまざまな主体が位置する。
それはそうと、精神科医であったファノンによる最も衝撃的な内容がやはり5章である。植民地支配をめぐって精神に異常をきたした人々の記録が多数報告されている。これらは脱植民地化された現代において、遠い過去の事実とはとても思えない。非常に現代的な問題を提起していると同時に、人類があまり過去から学んでいないことも分かる。
丁寧な訳者の解説も含めて、貴重な読書体験でした。
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