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2017年12月

新しい論文が発表されました。

2001年度から東京経済大学で非常勤講師を始めて17年。現在、早稲田大学でもお世話になっておりますが、こちらのポストには首都圏非常勤講師組合のチラシがたまに入れられています。そんな頃から大学非常勤講師の処遇に関心をもつようになり、また3年前から明治学院大学にもお世話になっていますが、私と同じ講義「社会学6:エスニシティ・地域・境界」を春学期に担当している(私は秋学期)熱田敬子さんという存在が気になり、調べてみると『現代思想』に「専任イス取りゲームをこえて--大学に背をむける非常勤講師たち」という文章を書いていることを知り、早速読んでみた。だんだん自分の処遇について真面目に考える必要性を感じるようになり、日本地理学会会員で所属に大学非常勤講師と記している人に対してアンケートをとることにしました。 その結果を『地理学評論』の「資料」に投稿したのですが、貴重なオリジナルなデータというだけでは受け付けてもらえず、15人というサンプルの少なさ、集計結果の統計学的な不備などを理由に掲載不可にされました。学会員を調査対象としていることもあり、このままではこの学会の出版物だけが発表場所でしたが、幸いその電子ジャーナルである『E-Journal GEO』では丁寧に査読していただき、幸いなことに掲載に至りました。

成瀬 厚 2017. 地理学関連科目を担当する大学非常勤講師の雇用実態と意識.E-journal GEO 12 (2): 280-293.

電子ジャーナルですから、当然ウェブで読むことができます。こちらからどうぞ。

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私たちの声を議会へ

三浦まり 2015. 『私たちの声を議会へ――代表制民主主義の再生』岩波書店,212p.2,000円.

 

わが家は朝、NHKラジオを聴いている。5時からは「マイ朝ラジオ」という番組をやっているのだが、そのなかに「社会の見方・私の視点」というコーナーがある。このコーナーにたびたび出演して、いつも分かりやすいが鋭い意見をする、三浦まりさんという人がいて、気になっていた。上智大学の政治学教授だとのこと。特に、衆議院選挙前の特集で登場したときに、「私は女性参政権の歴史を研究しているのですが、女性が参政権を獲得するまでに払った多くの努力と犠牲のことを考えると、棄権という選択肢は考えられません。」という発言にドキッとした。私自身、研究者でありながら、政治にはほとんど関心がなく、30歳になるまでは投票というものをしたことがなかった。とりあえず、30歳で初めて投票に行ってからは欠かさず行くようにしているが、無関心はつい最近まで大きく変わることはなかった。しかし、私も結婚し子どもを持ち、家を建てて現在の住所に戸籍を移して、このままこの地に骨をうずめようと決心してからは、地元に関わることを考えるようになり、政治的な関心も高くなってきた。

地域の祭で自民党の国会議員や市議会議員が顔を売っていることに辟易し、保育園の父母会の会長を務め、その件で共産党の市議会議員に相談したりするなかで、自分の生活の問題として政治について考えるようになった。それはローカルなものだけでなく、都政や国政にも必然的に不満を抱くようになった。いまだに正規の就職をしていない身としては、市議会議員などになるという選択肢も考えていたりする。しかし、意識ばかり高まっても知識が追いつかないとどうにもならない。ということで、とっかかりとして、この人物の文章を読んでみたいと思った次第。政治学は比較的近い分野でありながらも、なかなかどこからアプローチしたらよいのか分からないということもある。本書は岩波現代全書の一冊であり、かなり一般読者を想定しているはずだ。

はじめに
1章 代表とは何か
――代表制と代表性
2章 政党は何をめぐって競争するのか
――政党対立軸の変遷と責任政党政府
3章 参加を考える
――議会の外の代表制/性
4章 「分配」と「承認」をめぐる政治
5章 再び参加を考える
――グローバル化と経済格差
終 章 私たちの声を議会へ

著者はカリフォルニア大学バークレー校でPh.D.を取得したとのこと。各地でさまざまな講演も行っているということで、限られた短い時間でのラジオ・コメントも分かりやすくかつ物事の本質を捉えた話ができるのだと思う。本書を読んでみて、私の直感は正しかった。本書の参考文献は、欧文の最新政治学研究や、日本語訳のある政治学の古典、そして日本の政治学研究など、沢山すぎず、代表的なものを少しずつ読み進めていこうと思える文献表だった。

もちろん、それだけで評価するべきではない。代表という抽象的だが基本的な概念。そして、私自身よく分かっていない政党の話。特に、日本における政党の具体的な歴史を概観しているのはとてもありがたかった。「55年体制」などの基本的な知識もない私だが、自由民主党という名称とその政治的態度の矛盾ばかり感じていたが、本書の説明ですっきりし、またなぜ今日においても自民党が勝利してしまうのか、ということについても少なからず理解することができた。

タイトルにもあるように、本書は現代日本の政治体制を解説するだけのものではなく、それを変えていこうとする啓蒙書でもある。第3章の副題にもあるように、議会の外から私たちが声を上げていくことが必要であり、選挙の結果を受け入れるのみではいけないのだ。ただ、ここについては私自身はもう少し期待をしていた。例えば、選挙権を持たない18歳未満の若者とか、外国人などの意見を届けるチャンネルはあるのだろうか。そういう活動をしているNPO法人などの事例がもっとあることを期待していたが、少し抽象的な議論に終始しているような印象を持った。

逆に私が意識していなかった問題で、本書で強調されていたのが「ケア」の問題、すなわち高齢者介護の問題である。もちろん、こういう福祉の問題は政治の問題ではあるが、簡単にピンとはこない。しかし、「どのようにケア責任を家庭内で、社会のなかで、また国家の役割として分担するのかは、きわめて政治的なイシューである」(p.v111)という文章を読むと、著者が女性であることも含めて説得的に理解ができるし、またローカルからナショナルまで、また今後のケア労働者の担い手を外国人移住者に任せていくということも含めるとグローバルな問題として、スケール横断的な今日的トピックだと理解できる。

本書を読んで改めて思うのは、代議員制民主主義を採用している日本であるが、代表者に自らの思いを託すという私たちの基本的な政治的行為である投票を行うにあたっても、私たちが知らない、あるいは知らされていないことが多いということだ。このあたりについては、やはり教育やマスメディアを通して啓蒙していく必要があるのだろうか。あるいはそれがなされると中央政府にとって都合の悪いので、あえてそうはしていないのか。しかし、一方で啓蒙という近代主義的な発想についてもその達成には躊躇してしまう。

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