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グローバル資本主義と〈放逐〉の論理

サスキア・サッセン著,伊藤 茂訳 2017. 『グローバル資本主義と〈放逐〉の論理――不可視化されゆく人々と空間』明石書店,333p.3,800円.

『グローバル・シティ』の初版が1991年なので,最新のサッセンの議論に触れてみたくて,原著が2014年の本書を手に取った。本書は『グローバル・シティ』と同様の手法で,一般的に入手可能な統計資料を提示しながらの論の展開だが,本書が描き出す現代世界の矛盾はあまりにも衝撃的で,刺激的な読書体験だった。

日本語版への序
序 過酷な選別
1章 縮小する経済,拡大する放逐
2章 新しいグローバルな土地市場
3章 金融とその能力――システムの論理としての危機
4章 死んだ土地,死んだ水
結語 システムの末端で

一時期,地理学においても「政治生態学」という分野があり,自然環境をめぐる政治性をテーマにした研究動向があった。また,先日息子が図書館から借りてきた『ぞうの森とポテトチップス』という絵本が非常に衝撃的だった。この絵本はボルネオ島が舞台で,パームオイルのプランテーション畑が拡大する過程で,象たちが住処を追われるという話。そのパームオイルが私たちに身近なお菓子であるポテトチップスを揚げるのに欠かせないという。まさに,パームオイルの話は本書にも出てきます。
一方で,本書が掲げる「放逐」という概念は,先日紹介したニール・スミスのジェントリフィケーション論でも出てきたが,ハーヴェイ『ニュー・インペリアニズム』に出てくる「略奪による蓄積」といった概念に近いのだろうか(とはいえ,ハーヴェイは未読。サッセンにも引かれていません)?ともかく,資本主義という世界システムが利潤を引き出す対象が不足してきたため,先進国や低開発国を問わず,下層階級の人々の命を奪うことも厭わずに搾り取る状況が今日は常態化しているという。
その結果生じる難民問題についても,基礎的なデータを提示して,いかに貧しい国が大量の難民を受け入れているかということが明らかにされている。一方で,先進国では情報遊びのように,「金融」という名のもとに多額のお金がやり取りされている。ともかく,本書で提示された数々の問題は地理学でも扱うべきものであり,それは全てグローバルなものであり,日本では研究しにくいという類のものではない。例えば,第2章では他国の土地を購入するという話だが,ここには王子製紙など,日本の企業も登場する。まさに差し迫って必要とされている研究ではないだろうか。

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