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娼婦

アラン・コルバン著,杉村和子監訳 1991. 『娼婦』藤原書店,626p.7,800円.

手元の手軽な未読本がなくなり,ついに手を出した分厚い本書。随分前から私の書棚にはあったが,おそらく読んではいないはず。通勤電車のお供にはちと重いが,読み始めてそれだけの価値はあると感じ,頑張った。

日本語版への序文
まえがき
第Ⅰ部 規制主義による公娼制の計画と隔離された世界
 第1章 規制主義の言説
 第2章 規制主義の隔離された世界
第Ⅱ部 監禁から素行の監視へ
 第1章 規制主義の計画の波錠,あるいは誘惑のイリュージョン
 第2章 満たされぬ性と売春の供給
 第3章 規制制度への批判
第Ⅲ部 新しい戦略の勝利
 第1章 性病,誘惑,身体的退化――監視の必要
 第2章 法制的無策と新規制主義の事実上の勝利
結論
20
世紀〔1914-1978〕――ベルトコンベアー式色恋と身体の新しい管理構造

規制主義という言葉が目次にも何度も出てくる。そして,それへの批判というのがあるが,決して二項対立的な別の〇〇主義があるわけではない。つまり,娼婦という存在を必要悪として公的に認める「公娼」という制度はあるが,基本的には娼婦という存在,売春というものを歓迎する者はいない。だからこそ,この規制主義というものは意外に捉えがたく,本書を読み進めていても,説明されているのがどのような立場なのか,時折分かりづらくなる。しかし,こうして目次を書き写すと,説明の手順と歴史の展開はすっきりと整理されているようだ。
本書の原著は1978年。本書の冒頭には,娼婦という存在を歴史学のみならず学問はまともに扱ってこなかったという。そこで,娼婦に関するあらゆる情報を集め(原題にあるように,期間としては19-20世紀に限定しているが),基本的にフランスに限定はしているが,あらゆる角度から分析する,その方法と労力には脱帽する。現代思想的な文献はフーコーくらいしか引用されていないし,言説概念に関する説明もきちんとなされているわけではないが,まさに同じ年に出版されたサイード『オリエンタリズム』に並ぶ労作だと思う。
そして,本書が単に過去を知る歴史学というだけでなく,出版の直前までの出来事を巻末にまとめ,現代の問題として捉えなおそうという姿勢もまさに新しい歴史家の姿勢として提示されたのだと思う。
その後,出版が続く「分厚い」コルバン流歴史学の著作の基本が本書にあり,また,その方法は徐々に洗練されていくのだ。ちょうど最新号の『思想』(岩波書店の月刊誌)には小倉孝誠さんが「アラン・コルバンと歴史学の転換」という文章を寄せていたりして,まだまだ注目されていることを知る。

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