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世界都市の論理

ノックス, P. L.・テイラー, P. J.編,藤田直晴訳編 1997. 『世界都市の論理』鹿島出版会,204p.3600円.

 

編者のノックスといえば,日本でも訳書『都市社会地理学』で知られ,テイラーも訳書『世界システムの政治地理』で知られる。ということもあり,本書も出版当時に知っていたが,当時は特に「世界都市」には関心もなかったので,購入しなかった。しかし,最近サッセンを読むようになり,また一方ではアブー=ルゴド(本書ではアブルゴッドと表記されている)『ヨーロッパ覇権以前』も読んだりして,本書への寄稿者の豪華さを今更実感し,中古で購入することにした。

序文
1部 導入:世界都市,その理論と文脈
 1 世界都市研究の課題と方法(ノックス, P. L.
 2 世界都市研究の到達点:この10年間の展望(フリードマン, J.
 3 世界都市と領域国家:その相互性の隆盛と衰退(テイラー, P. J.
 4 世界都市における集中と中心性について(サッセン, S.
2部 システムのなかの都市
 5 グローバル・マトリックスのなかの都市:世界システムからみた都市システムの地図化に向けて(スミス, D. A.・ティンバーレイク, M.
 6 世界都市,多国籍企業,都市階層:アメリカ合衆国の事例(ライアンズ, D.・サーモン, H.
 7 交通と世界都市パラダイム(省略)
 8 世界都市仮設:周辺からの省察(サイモン, D.
 9 カリブの都市システムとグローバル・ロジック:マイアミの事例(グロスフォーゲル, R
 10 シカゴ,ニューヨーク,ロサンゼルスの比較:世界都市仮設の検証(アブルゴッド, J. L.
 11 反周辺地域における“グローバル化”(省略)
3部 世界都市における政治と政策:その理論と実践
 12 世界都市の再定義:文化的理論/社会的実践(キング, A.
 13 地球-地域関係の理論化(ボールガード, R. A.
 14 世界都市の消滅と地域政治のグローバル化(スミス, M. P.
 15 世界都市と地球社会(省略)
 16 世界都市の環境問題(省略)
 17 世界都市の経営と管理(省略)
付録 世界都市仮設(フリードマン, J.

本書は国際シンポジウムの記録であり,各章の分量は決して多くない。しかし,明確なヴィジョンを持っており,今の私が読むにはちょうどよい内容であった。本書にも付録として収録されている,フリードマンの「世界都市仮設」という論文は,社会学者の町村敬志が編集した『都市の政治経済学』(日本評論社,2012)にも訳出されているもので,原著が1986年だが,本書はこの論文が提示する仮説をその後10年かけて検証してきた研究者の報告ということになる。
実は私も勘違いしていたのだが,「世界都市
World City」という表現はフリードマンのオリジナルではなく,1970年代辺りから,幾人かの人が提示していた概念であり,またサッセンの「グローバル・シティ」も幾人かの人が使用してる。ただ,もちろん各人によってその意味する内容が異なるため,漠然とその概念について議論するよりも,本書のように誰の概念化を明確にして議論することが有用だと思う。
フリードマンの世界都市概念はグローバル化における都市システムというものを強く意識しており,ウォーラーステインの世界システム論を意識しつつもそれを乗り越えようとするアブー=ルゴドのような研究者と,移民研究を出発点とするサッセンを結びつける。地理学でも,世界システム論を用いて政治地理学を復活させたテイラーがこの辺りから新しい局面に入っていくことも確認できる。
ともかく,世界都市という概念がグローバル化によって世界各地にある都市がネットワークで結び付けられるように,世界都市という概念が世界各地の専門分野も異なる研究者たちを一堂に会し,結び付けているということに意義があろう。そして,いくつかの章が省略されているのは残念だが, 8章の周辺地域や9章のカリブ海周辺,11章の半周辺地域などは,西洋世界中心的なこの概念と対象としての世界都市の偏りにも目配りされているといえる。
ただ,残念なのが翻訳である。私は訳者の労力があってこそ,翻訳本が日本の読者に提示され,多くの人に,さほどの労力をかけることなく読むことを可能にしているため,そういう苦情はいわないようにしているが,本書はかなりの難点がある。しかも本書は1997年という早い時点で出版されているので,細かいことはいちいち書かないが,最大の難点は文献である。本書を通じてその議論のベースとなっている研究を知りたいと思っても,その情報は断片的にしか示されていない。ある程度は会議の記録という側面から原著の問題かもしれないが,そこだけは残念である。

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