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嘘八百

今井雅子 2017. 『嘘八百』PARCO出版,239p.650円.

 

今年になって公開された映画のノベライズ版。映画の脚本は足立 紳さんとの共同だが,ノベライズは今井さんの単著。映画公開前に,調布のパルコでちょっとした映画関連の展示があって観に行ったとき,本書も売っていたが,映画を先に観ようと思っていたので購入せず。公開して,妻が監督・脚本家のティーチインがある会に観に行った。その際に,サイン会があり購入してきた次第。基本的に映画を忠実に活字化しているといえる小説。一応目次があります。

一 柴田
二 利休
三 光悦
四 大海原
五 嘘八百

そして,各章も節に分かれていて「うぶ出し屋 獺」「茶碗焼き 蜥蜴」「鑑定家 古狐」と,主たる登場人物が語り手となっている。とはいえ,厳密な意味で各人物の視点になっているわけではないが,映画が基本的に中井貴一演じる小池則夫(=獺)の視点で貫かれているのに対し,小説版ではいくつかの視点から物語が展開する。そういう意味でも,文学作品としてよく構造化されている。
また,これは文字による文学作品と映像による映画作品との違いとして当たり前の事実ではあるが,小説版では映画では表現することの難しい細かい事実を補足しているし,映画で俳優が微妙な表情で表現しているものは小説版では表現しえない。お互いが補足的な作品だともいえる。
ところで,本作は利休と当時の茶の文化,焼き物の文化などに関する史実も描かれている。かなり綿密な調査に基づく史実が本作を支えているのだ。しかし,一方で本作はあくまでもフィクションであり,史実の情報源などは示されていないし,どこからが事実でどこからが虚構かも明確には示されていない。私のような読者はどの区分が気になってしまうのだが,小説においてはそういうところは曖昧でいい。むしろ,区分できないところが面白い。

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コメント

私も、ちょうど今、読んでいるところなんです。

投稿: 岡山のTOM | 2018年3月14日 (水) 01時27分

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