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石の叫びに耳を澄ます

板垣雄三 1992. 石の叫びに耳を澄ます――中東和平の探索』平凡社,443p.3200円.

 

サイード『パレスチナ問題』の日本語訳につけられた一枚の地図は本書から取られたものだった。いわずとしれた日本におけるパレスチナ研究の第一人者は長らく東京経済大学にいたということもあり,直接の関わり合いは全くないものの,そこで非常勤をする身としてきちんと読んでおきたかった1冊。

遭遇のおどろき
概念化
構造をとらえる
移りゆく視点
 Ⅰ パレスチナ民族主義の出現 1967年:6日戦争~
 Ⅱ 挑戦を受ける国際政治 1970年:黒い9月~
 Ⅲ 国際政治主体として自己主張するPLO 1973年:10月戦争~
 Ⅳ アラブの殺し合い,PLO封殺の照準 1975年:レバノン内戦開始~
 Ⅴ 重包囲下のパレスチナ人 1978年:キャンプデービッド合意とイラン革命~
 Ⅵ PLOに退路はあるか 1982年:レバノン戦争,そしてイ・イ戦争の転機~
 Ⅶ 奈落の底に活路を求める 1985年:アンマン合意,キャンプ絶滅戦争~
 Ⅷ 中東和平への前進 1988年:パレスチナ独立宣言=PLOのイスラエル認知~
 Ⅸ ラクダは針の穴を通り抜けられるか 1991年:湾岸戦争,そして中東和平国際会議~

前半は比較的新しく書かれたものだが,「移りゆく視点」は1967年からほぼ書かれた順に並べられ,出版年の1992年に発表された文章までが収められている。サイードの『オリエンタリズム』を早くに出版した平凡社から出されている。
本書を読んで,日本でも早くからパレスチナ問題については著者によって訴えられておりながら,その正当な主張は日本社会のなかでまともには受け入れられていなかったようで,著者のもどかしさを感じられる。サイードの『イスラム報道』などで知るほど,日本における中東報道,イスラム報道は基礎があるわけではないため,欧米の状況とは異なり,まさに日本では他人事としてまともに扱われなかったというのが正直なところだろうか。
ともかく,著者の視点は非常に鋭く,自身がパレスチナ人であるサイードともひけを取らないように私には感じる。確かに,本書はまとめて執筆されたものではなく,一つ一つの事柄を一から丁寧に説明しておらず,私のような著者は知識不足で消化不良の個所もあるし,また複数の媒体に発表された文章が収録されていることもあり,重複している箇所もある。しかし,なによりも学術書でないことが著者の感情というか,憤りを強く感じさせる文章となっていて,刺激的な読書であった。単著としての学術書は少ないようだが,学術論文でも探して,継続的に読んでいきたいと思う。

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