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ギュスターヴ・クールベ

ファブリス・マザネス著,Akase, K.2007. 『ギュスターヴ・クールベ』Taschen96p.1,500円.

 

Taschenはドイツの美術系出版社で,本書は外国で出版された著作を日本の出版社で翻訳・出版したものではない。美術系はけっこう出版界での多国籍化が進んでいるように思う。それはそれで印刷の質とかの点ではいいっことかと思うが,書誌情報に関しては日本の慣例とは違っていたりして,困ることもある。
ちなみに,本書の内容は図版的なものです。とはいえ,著者名がきちんと表紙に掲載されていることもあり,本文は決して長くありませんが,しっかりした内容です。

折衷主義
名声,それとも絵画への一途な愛
最初の栄光に至るまで
シリーズの制作
終章:オルナンの巨匠の遺産
年譜

先日紹介した坂崎 坦『クールベ』(岩波新書)と比べて,クールベの印象が大きく変わることはなかったが,やはり異なる情報や捉え方の異なる点もあった。そういう意味でも,やはり1冊の自伝で理解したつもりになってはいけない。クールベが自画像を多く書いた音は坂崎も指摘していたが,本書はその表現内容も含めて説得的な解釈を展開している。また,クールベ自身が被写体となった写真もいくつか掲載されている。また,先人の作品からの影響についても,その図版をカラーで掲載して分かりやすく説明されている。クールベの画法は「写実主義」と評されることが多いが,この言葉自体がかなりあいまいなもので,目の前のモデルを写実的に描きながらも題材は非現実的な場面を描く作品もあるが,クールベはそうではない。一方ではプルードンのような社会運動家との交友から,クールベの作品から社会主義的な思想を読み取る場合もあるが,それに関しては,坂崎も本書も全面的には同意していない。本書の場合はいくつもの要素を併せ持った「折衷主義」と表現している。また,クールベが女性のヌードを多く描いたことは坂崎にもあったが,女性の陰部を中心に描いた「世界の起源」(1866年)という作品があるのは少し驚きだった。

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