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中世とは何か

 

ル=ゴフ, J.著,池田健二・菅沼 潤 2005. 『中世とは何か』藤原書店,318p.3,300円.

 

大学の講義で,アブー=ルゴド『ヨーロッパ覇権以前』を使っている。この本は16世紀にヨーロッパ覇権による近代世界システムが成立する以前の13世紀に,中東を心臓部とする世界システムができあがっていたという説で知られる。この本では,ヨーロッパ,中東,インド,中国といった順で構成されているので,今のところヨーロッパの説明をしているが,すでに小レポートを出さなければならず,おのずからテーマは中世ヨーロッパとなった。ということで,学生に2冊以上の歴史書を読んでまとめるという課題を出しているため,私もいくつか読もうと思っている。
そんな時,吉祥寺にある私の好きな古書店で見つけたのが本書。フランスの歴史家の本はいくつか読んでいるが,これまでの私の関心は近代だったので,ル=ゴフは読んだことがなかった。ということで,中身を確かめずに購入してしまったが,本書はインタビューものだった。まあ,自伝的な内容も含み,自著に関する話も出てくるので,ル=ゴフ入門のつもりで読むことにした。


Ⅰ 中世史家になる
Ⅱ 長い中世
Ⅲ 商人,銀行家,知識人
Ⅳ ある文明が形をなす
Ⅴ 天と地において
Ⅵ エピローグ

目次を読めば自伝的な内容だと分かりそうなものだが,インタビューといっても,質問者の質問は話のきっかけを作る程度の最低限のものであり,ル=ゴフが自由に語っているという感じ。前半はまさに生い立ちから歴史に興味を持ったきっかけ,そのなかでも中世という時代に対する興味。それを実現するための教育,大学卒業後のいきさつ,研究テーマの変遷などが語られる。『私はどうして地理学者になったか』を読んだ時にも思ったが,フランスにおいて研究者になる道筋は単純ではない。とはいえ,ル=ゴフは1924年生まれなので,そもそも私が思い描けるものとは時代が違うが。
本書の原題は「中世を探し求めて」というそうだが,藤原書店の好みのこの邦題になった。本書には著者なりのこの問いに対する答えについて語られているが,それは通俗的な中世観に常に抗ってきた軌跡ともいえる。とはいえ,私の場合その通俗的な中世観すら持ち合わせていないわけだが。一般的に中性という時代は476年に始まり,1492年に終わるといわれているらしい。1492年というのはコロンブスの大西洋横断の年なので,一般的な理解はよくわかる。476年というのは単純なものではないが,大まかにいってローマ帝国の崩壊を意味するようだ。また,中世は宗教の時代という一般的理解もあるようだが,当時はまさにそれが社会の中心すぎて,わざわざ「宗教」という言葉を使う必要もなかったのだという。考古学という学問は文字の残されていない時代,主に古代を対象とした方法だが,それは中世にも十分に活用されるものだという。
私も有している単純な時代区分では,ヨーロッパにおける中世と近代はルネッサンスという存在によって区分けされるが,アメリカの中世史家ハスキンズが1927年に提示した「12世紀ルネッサンス」(同名の本は日本語訳もされている)がよく知られているように,ルネッサンスと呼べる現象は中世にも幾度か異なる形で存在したという。確かに,高校の世界史の教科書でも,13世紀における貿易の発展に対処するための商業的な改革のことを「商業ルネッサンス」と書いていた気がする。
ル=ゴフは専門書よりも一般書の執筆でも知られるようだ。日本語されたものでも,1977年の『中世の知識人』が岩波新書,クセジュ文庫でも『中世の証人と銀行家たち』(1956年,邦訳なし)などを書いているようだ。初期のテーマは私も興味があるので,時間を見つけて読んでみたい。

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