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日本の女性議員

三浦まり編 2016. 『日本の女性議員――どうすれば増えるのか』朝日新聞出版,366p.1,600円.

 

前にも,岩波現代全書から2015年に出版された『私たちの声を議会へ』を紹介したが,その著者三浦まりさんが編集した本を読んだ。三浦さんはNHKの「マイあさラジオ」の「社会の見方 私の視点」というコーナーによく出演していて知った政治学者。

はじめに(三浦まり)
1章 女性が議員になるということ(三浦まり)
2章 躍進の90年代(新藤久美子)
3章 2000年以降の停滞(三浦まり)
4章 国会議員への道(国広陽子)
5章 女性議員と男性議員は何が違うのか(大山七穂)
6章 地方の女性議員たち(竹安栄子)
7章 女性が政治に参画するために(目黒依子)
おわりに(三浦まり)
女性と政治関係年表(1945年以降)
参考文献
索引

執筆者は政治学だけでなく,法学,社会学,社会心理学などを専門とした人たちで,上記の他にコラムを担当している橋本ヒロ子さんがいる。議員という政治の話だけではなく,女性の政治参加というテーマでもあるので,ジェンダー研究やフェミニズム研究が中心だといってもいいかもしれない。
先進国の中で,日本の女性議員比率がかなり低いというのは日本に住む多くの人たちが感覚的に知っていることだとは思うが,本書はまずそれを数値で丁寧に示している。国会議員では選挙制度が異なると同時に立法における位置づけも異なる参議院と衆議院における女性比率の違い,都道府県議会における比率,市区町村議会における比率,さらに,市区議会なのか町村議会なのか。議員数の少ない議会における女性不在議会数など。もちろん時代によっても。
時代に関しては,大まかだけど分かりやすいストーリーを描いている。日本では戦後すぐに女性に参政権が与えられ,女性が初めて国会議員になった年の女性の数は少なくなかった。しかし,世界においては着実に女性議員比率が増加する時代に,日本は低い水準で推移する。土井たか子社会党首の活躍による1989年のマドンナ・ブームという現象により女性議員はようやく増えたが,またその後停滞してしまう。世界的には1990年代がまさに議会における男女比が問われた時代で,先進国のみならず各国の事情もある中で女性比率が高まって行くが,また日本はその後伸び悩んで今日に至っている。そうした日本の状況を確認した上で,その要因をさまざまな角度から考察している。
本書では,単に議会において女性の数を増やすということではなく,議会で決定される事項に関して女性がいかに関わるかということを重視しており,立法に積極的に参画した女性政治家をクリティカル・アクターと呼び,彼女たちへのインタビューを実施している。本書では,クリティカル・アクターになる条件を,〈コミットメント〉〈ポジション〉〈ネットワーク〉という三つのキーワードで特定している。
本書ではインタビューした現在の女性議員だけでなく,市川房枝など過去の重要な女性政治家の功績についても説明がある。先進国のなかでは日本は男女平等が進んでいないと思うこともあるが,それでも偉大な女性たちが尽力したおかげで現在のこの国がある,と知ることができる。本書には社会学者がそれなりに入っているが,読んでいるとどうしても推測の域を出ないような考察があることが気になってしまう。だが,それをどうしたらきちんと実証できるかと考えると,データ的な難しさも感じてしまう。その辺りがやはり政治というテーマは難しいのだろうか。ともかく,いろいろ学ぶところがある読書でした。

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コメント

ご無沙汰しております。2年前から,「橋本ヒロ子さん」が校長を務める女子高の非常勤講師として地理を教えています。今春の卒業式の校長式辞は,まるで女性学の講義でした。

投稿: ヤベ | 2018年11月12日 (月) 22時58分

ヤベ君

書き込みありがとう。
女子高で非常勤ですか。
私も女子大で非常勤を半期だけやりましたが,けっこう大変でした。

でも,そういう校長がいる学校なら生徒も少し違うのでしょうか。

投稿: ナルセ | 2018年11月14日 (水) 05時24分

2年前から,ヒロ子先生の学校,今年度は,さらに別の女子校でも,高校で地理と世界史を担当しています。
生徒… 女子校は,専業主婦とか玉の輿願望が多い気がしますね。校長先生の影響は,あまり,大きくないのかも。

ともあれ,地理で,挙げ句,大学院をドロップアウトして40過ぎた人間を雇ってくれる私立校は多くありませんから,とりあえず公募があれば出してみて,ご縁があれば,という感じです。今年度は,たまたま,女子高を兼務することになりました。

慣れてきたので,ジェンダー絡みの話もしようかと思うのですが,迂闊にも,ナルセさんたちが作られた,大明堂の本を買っていなかった…

投稿: | 2018年11月14日 (水) 22時20分

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