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クールベ

坂崎 坦 1976. 『クールベ』岩波書店,210p.230円.

 

今,国立西洋美術館で「リヒター/クールベ」という展示をやっている。といっても,リヒターの2003年の風景作品と,リヒターが自室にこの作品の隣に展示しているというクールベの風景作品(1873年)とを並べて展示するという小企画。リヒターについて,2013年の論文で私が触れたこともあり,今度研究者仲間でこの展示を観に行く前に,私がレクチャーをすることになった。クールベについてはあまり知らないので,いくつか知識をつけておこうと購入したもの。

第一章 卑俗の礼賛
第二章 「オルナンの埋葬」――「村の娘達」
第三章 「水浴の女達」――「遭遇」
第四章 「画家のアトリエ」――「会議の帰途」
第五章 「鹿のかくれ場」――「荒れる海」
第六章 「おうむと女」――「ねむり」
第七章 精励・探究・反省
第八章 栄光と失意
付録・クールベ覚え書
クールベ年表
あとがき

本書は岩波新書の一冊だが,良くも悪くもかつての新書らしい内容。まず,参考文献の類は全く示されていない。ギュスターヴ・クールベ(1819-1877)は19世紀のフランス画家だが,本書は自伝的な内容を基軸にして,その作家人生の時代ごとに代表的な作品について,その顛末を順に並べるといったもの。非常に因襲的な書き方で,そうした因習的な構成になれている私のような読者には読みやすい。しかし,近年の美術批評や美術史の分野から刺激を受けている身としては,かなり物足りない。
ただ,今回はほとんど知識のない画家について知ることが目的だから,その目的は十分に達せられた。私の気になるところとしては,現代に生きるドイツの画家ゲルハルト・リヒターとの共通点だが,それはいくつかあった。まず,クールベが「等身大」で絵画を描いていたということだ。リヒターの作品のいくつかも等身大で描かれている。また,両者とも葬儀を描いた代表的な作品があること。また,両者とも多くの風景画を描いていること。とりあえずはこんなところだろうか。それにしても,こうした後世に名を残す人物は波乱万丈な人生を歩むものなのだな。あるいは,偉人を常人とは異なるものであるかのように描くのが後世の者に課された使命なのだろうか。

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